大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

「DNAに蓄積してきたものが、僕たちにも伝わってるんだ」「トカゲであった頃からの記憶?」「陸上競技のトラックに立とうとする人間は、たぶん、物覚えのいい遺伝子を持って生まれてついてしまったんだ。追体験しようとしてるのさ。遠い昔の快感を」「セックスもおんなじ?」

800 TWO LAP RUNNERS [DVD] 800 (角川文庫) 1994年の映画『800 TWO LAP RUNNERS』。監督は廣木隆一。脚本加藤正人
原作の小説は川島誠800 (角川文庫)』。
川島誠は児童文学に《性》をもちこんだ野心的で魅力ある小説家であり、それが要るひと要らないひとで評価が分かれる。
映画も、のっけから体育倉庫でセックスしている高校生。これが中沢龍二(野村祐人)で、やんちゃだし、家はやくざだし、へいきでひとを怪我させるしというキャラクター。
対する広瀬健治(松岡俊介)は気持わるいほどまじめに陸上競技に打ちこんでいる。性的な部分のコントラストもはっきりしていて、といって童貞ではない。ゲイなのだ。
それでいてカノジョらしいものがいる。二人がむすびついているのは相原(袴田吉彦)の衛星のようなものとして。
広瀬の妹は、兄にカノジョがいるのが許せない。そのオンナは足がわるいから同情的に好意を寄せているのだと断罪する。
兄に「キスしたくなったらあたしがいつでもしてあげる。妹なんだから。ね?」。
みごとにぶきみが詰めこんである。うだうだと行動しないのではなく、ぐねぐね行動してしまう。十代の(もちろん、自殺しなければ二十代まで引きずることになる)ぶきみさが好い。