大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

多様、多感。雑感はごった煮。

散歩が仕事 (文春文庫)
早川良一郎散歩が仕事 (文春文庫)』。オビと解説は江國香織
この解説がみごとだ。〈大正生れの著者は戦争に行っている。従軍体験について書かれた幾つかのエッセイは、たとえば映画について、たとえば女性のお尻についてのエッセイと、平等な重さと手つきで書かれていて、その姿勢がまず恰好いいのだが、緊密で鮮烈でユーモラスで、いい小説を読んだあとのような余韻が残る〉
〈この本に収められた五十四編は、どれも短いし、ある意味でそっけない。けれど一編ずつに手ざわりがあり、奥行があり、含羞がある〉
〈一つの場所に流れている幾つもの時間、その堆積、目には見えなくてもたしかに在るもの。
そのことの美しさを、でもこのひとは美しさのように書いたりしない。当然のように、ついでのように、大切がらないふうに書く。大切がらない、というのが、たぶん大事なのだ。ミニスカートについての所感もおじいさんの思い出も、おなじ風通しのよさで書く。その矜持をなつかしく思うのは、私が昭和の娘だからだろうか〉
解説で、得心する。異性愛者の男性として〈お尻〉や〈ミニスカート〉を洒脱に記すのは《昭和》だ。
多様性をまえにして、それはむずかしい。多様な、異端の語り手がいれば聴き手はかってに下種になる。