大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

白石加代子の役名はカヨでもよかったんだと一寸夢想した。

KAATキッズ・プログラム2022『さいごの1つ前』観る。

目当ては白石加代子(1941年生)と久保井研(1962年生)の共演。作・演出は松井周(1972年生)。

ほかに出演者は薬丸翔(1990年生)、湯川ひな(2001年生)。

冒頭、映画を観ているカオル(白石加代子)、ミチロウ(薬丸翔)、マリン(湯川ひな)。映画でなにが起こっているのか、あのひととこのひとはどういう関係なのか、声にして尋ねずにはいられないカオルの性格、演技はいっぺんで判る。

ここは機内。3人は地獄に向かっている。

地獄への案内人アキオ(久保井研)。異界をかんじさせるカオナシマグリットふうの衣裳。どこか子供っぽいところがある。そして音楽的。久保井研と白石加代子のキッズみを凝ッと視る。

白石×久保井が強力過ぎて、薬丸翔と湯川ひなが組むようなかたちになってしまったけれども、台本のなかに見いだせるコントラストを重んじれば、地獄に行きたいマリンと案内人のアキオが結託し、当然天国だとかんがえる若き成功者ミチロウと認知症ぎみのカオルが共鳴したほうが観易い。

白石加代子と久保井研の見せ場が終盤にあるからこそ、二人は道中絡み過ぎなくとも良い、という判断もできたわけだ。

観客に参加を促したり、天国と地獄なんていう議論を超えた高次の宇宙や神に触れるばめんなど、自由につくられている。ならば天国行きの可否を決める「最高の思い出」の審判も、教育的でなくてもよかったのでは?

 

松井周のつくりかたは、既成概念をくつがえすようで二項対立をより強固にしてしまうところがある。事前にひらかれたワークショップでも「すてきな地獄」「楽しくない天国」と、きれいに反転させている。もちろんキッズの柔軟かつ野蛮な創造性はそんなことでとどまりはしない。

「りゅう すべり台じごく」「電車ごっこ ピクニック じごく」「すとれすはっさん地国」「おばけじごく」……。

すてきな地獄として「ねこ地ごく」があり、楽しくない天国にも「けっこーイヤなねこ天国」は存在する。《ねこ》は双方にまたがる。両義的で矛盾するイメージというもののおそろしさ。それをそのまま料理するおおらかさ。あるいは図太さだろうか。それを大人の作物にももとめたい。

 

じぶんは無謬であると信じて疑わないシスヘテロ男性を演じる薬丸翔は苦戦していた。無謬は、見ていて退屈だ。エンタメにするのはむずかしい。

湯川ひなが演った負の感覚つよき少女マリン。こんな声がでる。こんな動きができる。熱演だった。