『百日紅』観る。葛飾北斎の娘・応為を描く。
表現者だが、被写体として魅力的な葛飾応為。父の北斎が型破りで、それを継ぎつつ、映画のなかにみることができるのは優しさ。
美人に設定され、声を杏が当てているけれど、外見的にも内面的にも社会との不調和をかんじていただろう応為だから、後続の作家を刺戟する。杉浦日向子(原作)や、山本昌代による虚構化。
どこか不貞腐れていて、それでいてつながっていて。偏屈、職人、天才、奇矯に北斎が逃げることができるのは「男」だからだけれども、応為はそこにとどまれない。仙人になりたい。おんなにもなりたい。
脱俗もまた俗っ気ゆえ、応為=お栄よりも北斎のほうがウワテなところもある。落語「抜け雀」を連想させもする地獄絵のエピソードは、佳い。
ぜんたいとして幽玄、ホラーがかった挿話がつよいのは監督・原恵一の野心か。
声の出演松重豊、高良健吾、筒井道隆、入野自由など、おとこもおんなも色っぽくて酔える。