大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

ムツゴロウの博物志 (続々) (文春文庫) 畑正憲ムツゴロウの博物志 (続々) (文春文庫)』。
〈イヌは不思議な動物である。どんなにもうろくしていても、自分に恩恵を与える人間を正確に記憶してるらしく、八百人の寮生の中から、餌をくれるものを見分け、足元にじっとうずくまっていた。さいそくがましい動作は一切しないイヌであった。うっかりしていると、食べ終わるまで気づかないことがあるのであわれだった〉
二回にわたる「マルクスの犬」の章が凄い。大学に住みついた老犬を喰ってしまう話である。ゴールディング蝿の王』の豚ごろしを彷彿とさせる怖ろしさ。
〈どうであろう。入口には、傷口生々しいイヌの首が、カッと目をむいたまま飾られていた。その向こうには、大鍋が湯気をたて、青いネギにはさまれ赤い肉が泡をふいて煮えていた。それはつまりわがマルクスのイヌの哀れな末路であった〉