大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

「なにか困ったことがあるたび電話してたら日が暮れちまう」

だれもがクジラを愛してる。 [DVD]
だれもがクジラを愛してる。 (竹書房文庫) 『だれもがクジラを愛してる。』(原題 Big Miracle)、2012年の映画。実話。舞台はアラスカ、1988年、大統領はロナルド・レーガン
コククジラの救出の中心に自然保護団体グリーンピース、というそれだけで拒否反応をおこすひともいるけれど、どんなものでもさまざまな価値観をむすびつける可能性はある。ノンフィクション小説やハリウッド映画として打算がはたらいていたとしても、その作品はフェアなものだ。
原作はトム・ローズ。監督ケン・クワピス。邦題の「愛してる。」はもちろん多義的なもの。時代の趨勢もあって人道的であることが利益につながる。博愛の精神もある。アダム(ジョン・クラシンスキー)が発信した「厚い氷に道を阻まれたクジラの親子」映像は多方面に反響を生む。
アクティビストのレイチェル(ドリュー・バリモア)もその一人で、アダムとはかつて恋仲だったというのが巧い。攻撃的でへらず口。
登場人物にメリハリがある。石油採掘会社の社長マグロー(テッド・ダンソン)。そのかれを上手に誘導することのできる妻(キャシー・ベイカー)。
語り手であるイヌピアト先住民族の子ネイサン(アーマゴック・スウィーニー)と祖父マリク(ジョン・ピンガヤック)。ネイサンはアダムに「大人になったらこんな町にいないよ」と言う。アダムにマリクは「わかってもらう必要はない」。
イヌピアトのマリクはなにかを宣伝したいわけではない。だが報道されている自覚はある。ひらかれている。「世界がこの件に注目している。われわれの道理はもう通用しない」


くだくだしい議論には明け暮れない。刻限がある。齟齬は齟齬として進んでいかなくてはならない。それが脚本というものでもある。すくないやりとりでいかにころがるか。