冒頭で桂文枝、オール阪神、ジミー大西、笑福亭鶴光など芸人わらわら現れて、キャストがにぎやかなだけの映画かとかるく観はじめるが、なかなか、どうして。
映画『のみとり侍』(2018)。原作は小松重男(1931−2017)の短編集『蚤とり侍』。
助平だけでは、のみとりは勤まりやせん。よござんすか。のみとりを呼ぶには、おなごにも勇気が要りやす。そのおなご相手に、居丈高な物言いは、百害あって一利なしです。偉ぶったが最後、おんなたちはプイと横を向いてしまう。
蚤とり屋の主人夫婦に風間杜夫と大竹しのぶ。これが佳い。この二人の演技にくつろぐと、ほかの出演者も視えてくる。喜劇部分のみ、悲劇部分のみ担当する俳優もいれば両方にまたがる者もいる。寺島しのぶ、豊川悦司、前田敦子、伊武雅刀、松重豊、斎藤工ほか。主演は阿部寛。
「猫の蚤とり」というのは女性相手のおとこの売春でもあると、設定が明らかになれば自ずと濡れ場も生まれるわけで、原作短編集に収められたいくつかを一本にまとめ上げながら、緩急をつけて飽きさせない。
脚本・監督、鶴橋康夫。