(この二人は5年間…ちゃんと“師弟”だったんだなぁ…)
穂積『僕のジョバンニ 3 (3) (フラワーコミックスアルファ)』。
5年間。それがどのようなかたちになるかが天才と凡人の差ではあるのかもしれない。鉄雄の5年間は、端から見れば《空白》である。
鉄雄は腕だめしにとちいさな大会にエントリーするが、それを聞きつけた「天才」郁未もコンテスタントとして現れた。ここでは、まだ、郁未の愛憎はわからない。
「今更 帰ってきても 日本に お前の居場所はないぞ」と郁未。
「5年前だって 俺には日本に居場所なんてなかったよ」と鉄雄。
──俺は…
一(いち)から始めるために
この日本に帰ってきたんだ
…いや一(いち)から
じゃねぇな
0(ゼロ)からだ
大会のあと。公園でチェロを弾く鉄雄。やってくる郁未。郁未の手にはニッパー。
たしかに郁未は天才だ。その不幸はたとえば標準語でしか話せなくなったこと。
鉄雄の強みは、標準語や社交辞令を悪用できるところ。
「師匠の顔を潰すようなことになって 本当にすみませんでした!」