大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

背中の描写、多い。

僕のジョバンニ 2 (フラワーコミックスアルファ)

折り合いなんてつけたら
鉄雄は その瞬間に
チェリストとして死ぬ

穂積『僕のジョバンニ 2 (フラワーコミックスアルファ)』。小学6年生の鉄雄はチェロを弾いていた。その音をたよりに、海難事故から生還できた郁未(いくみ)。郁未は鉄雄からチェロを習うが、才能ははっきりと、郁未のほうにあるらしい。
吸収力はもちろん、ゆたかな表現が可能なこと。
生真面目さを全き模倣へと特化させてしまっていた鉄雄は郁未に嫉妬し、怒りをぶつける。しかし郁未がチェロに習熟することは鉄雄への愛情表現なのであり、チェロ弾くことを否定されても困惑するばかりだろう。
鉄雄は家にときどきやってくる「魔女」百合子に弟子入り志願する。
《天才と凡人》に加えて《師匠と弟子》というのがでてくる。
そもそも凡人、と言いきるにはためらいをおぼえるほど鉄雄は努力家であり、自由闊達にみせる計算や練習など、たいていの表現者がもっているもの。読み手としてはここでずいぶん揺さぶられるが、百合子の「あなた……この世界の師弟関係というものがどういうものか分かってない」なんてのも凄い話だ。

愛がなければ弟子は取れない

だったら今すぐ俺を愛してくれ

これはもう、恋愛の呼吸である。ここを先途と飛びこんでいく力。
このするどさで(凡人の)小学6年生に入ってこられたら、プロのチェリストである百合子だって相応のものをあたえぬわけにはいかない。留学。5年が経過する。一代記には省略がつきものとはいえ、大胆なマンガだ。足りないところはアトで説明すりゃあいいの駆け足が心地好い。
高校生になった鉄雄のハッタリが、凡人のようでもあり自負なのだと受けとめることもできる。とてもかわいい。

俺は天才じゃない
演奏に独自性がない
仕方ねぇだろ
俺はそういうのが
好きな子供だったんだから

台詞が、巧い。詭弁のようで実感だ。
伴奏者の縁(ゆかり)が「みんなが思うような“天才”ってさー ホントに存在すんのかな───?」と。