「夫人。あなたには家庭がある。ただの主婦に、もどればいい」
「それがもの足りないから……踊ってたのよ」
「大阪御ゑん祭 『夫人マクベス』」(2019)。マクベス夫人としての近藤芳正を軸に、起承転結、4つのユニットのオムニバス。
【起】テノヒラサイズ「万博と網タイツ」、【承】匿名劇壇「お母さんと一緒」、【転】かのうとおっさん「魔女たちの晩餐24時」、【結】GPP「バーナムの森がやってくる」。
舞台を現代に移し、自由な翻案。起承転結のそれぞれにつながりはない。
起と結の作・演出はオカモト國ヒコ。原作の引用もあるし、締めるところは締める。「バーナムの森がやってくる」でマクベス夫人はレジスタンスに誘拐されるが、そこで誘拐犯たちと仲良くなるというのは物語ではよくあること。誘拐犯たちは夫人よりも若い。誘拐犯の内輪の喧嘩。それに夫人は言う。
「ちょっと! 折れなさい、お互いに。……若いって、駄目ねえ」
「もしよければ、このまま逃げてください。すべて忘れて、何も背負わず……マクベスから、自由に」
ここからが、美しい。マクベス夫人の人生のつづき。平凡ななかにも、奇跡は待っている。そして偶然というやつには、再会や反復の顔もある。
ちょっと! ちょっとちょっとちょっとちょっとちょっとちょっとちょっと、ちょっと!
……またやんの? はじめから?
ここから終いまではすぐ。
舞台転換中のゲストは船木誠勝。
出ずっぱりだった近藤芳正がゆるくもシリアスなところをみせて良かった。
大阪的な緩急の二面性でいうと湯浅崇も魅力があった。