書肆侃侃房の小冊子『ほんのひとさじ』。『KanKanPress ほんのひとさじ vol.6』から読む。歌人によるエッセイやショートショート。もちろん短歌も。特集「つぶやき」。
眠るとき君の名前を呟けば夜の空気が動いてしまう
鈴木晴香
つぶやきがささやきになり、頬たちは互いの影を憶えはじめる
虫武一俊
好きだったことはとけない雪になるこころをこぼしてゆく銀のみち
國森晴野
倉田タカシのショートショート「ただいま、電話に」おもしろかった。〈ただいま、電話に出ることができません〉からはじまるメッセージがいくつもならぶ。〈かわりにわたしの祖父が出ます〉や〈この電話は、ヒグマとアナグマとホッキョクグマが仲良く暮らす洞窟にあるのです〉もいいいけれど
ただいま、電話に出ることができません。空は青くて、人びとの顔は緑色です。古い銅像だからです。
なんて好み。
青目海の名もある。
海に来れば海の向こうに恋人がいるようにみな海を見ている
五島諭『緑の祠』