大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

「俺のことはそいつが一番ようわかっとる」

坂道のアポロン (3) (フラワーコミックス) 坂道のアポロン (4) (フラワーコミックス) 小玉ユキ坂道のアポロン』第3巻、4巻。好きな映画監督にトラン・アン・ユン、オススメの漫画『西遊妖猿伝』──なかなか硬派な趣味をお持ちで。ここに「あと大林宣彦監督の尾道三部作は大好きです」と足されるので、ああ大林監督のオカシイ部分も汲めてるんだなァと感心する。
さて。
坂道のアポロン』主要人物の一人、大柄で優しい千太郎はビッチだろうかただ優しいだけだろうかとかんがえる。西見薫はある日突然ゲイに転身しかねないきっぱりしたノンケ、というかんじだけれども、千太郎はノンケ風味のバイにおもえる。もちろん、物語から離れての空想として。
千太郎の優しさは、不幸によって育まれたものだ。薫(ボン)とはちがいすでに承認欲求をのりこえている。それでも薫といることで、じぶんでは放棄したはずのかなしい過去や未来と向きあわねばならなくなる。薫のかなしみをうめるためにじぶんの過去や未来を語る必要があるからだ。

───
ボン
俺(おい)も家ん中に居場所のなか人間ばい
ずっと前からな

〈あいつ去りぎわに 何も言わずに 俺の肩を 軽く 叩いてった〉
千太郎には適度なデリカシーのなさもあり、なぜ窓から入ってくる? とか、なぜいっしょに旅行? とか。
薫の生き別れの母親が水商売しているのはとても物語だ。駆け引きなしの母親の愛情というものも。
ここでまたかんがえる。友情、とくに同級の者のもつ優しさとはなんだろうかと。肉親の無償の愛情とどの程度異なるものなのかと。