「僕も何かを観て感動すると、まず歌舞伎に生かせないかな、と考えます」 市川染五郎
『婦人公論』2020.1.28。表紙は松本幸四郎、市川染五郎。そこからなにわ男子まで。賑々しくて良い号だった。
特集「さぁ、幸運を呼び込もう」はさまざまなひと。美輪明宏は「病院に限らず、思えば現代の日本は、情緒産業がすっかり衰退してしまいました」、
「本当はコンサートもやりたいですし、お芝居もやりたいです。情念として、『あそこに戻りたい』という思いは強い」と。
プリンセス天功、「もともと18歳までしか生きられない命だったのだと思えば怖くない」。
アメリカのショービジネスの世界では、誰でも最大限の努力をするのが当たり前。それでもヒットするかどうかはわからない。
特集の記事がおもしろくって、あちこちめくる。ソニンはタフ。「文化庁新進芸術家海外研修制度にこっそり応募。この制度で留学すれば、誰が何と言おうと、1年間は絶対に帰って来られないんですよ(笑)」
「15歳のときに憧れたSPEEDにはまだまだ遠いけど、『私もソニンさんのような舞台女優になりたいです』というお手紙を、近頃はよくいただくようになりました。実は、それってそのまま、15歳のときに私がSPEEDのメンバーに出した手紙と同じなんですよ」
西畑大吾と長尾謙杜が好きなので、なにわ男子のページを堪能。
そして伊藤比呂美の連載に溺れる。単刀直入。その身に引き受けながら書く力づよさ。
「ああ疲れた ほんとうに疲れた」
これは石垣りんの「その夜」という詩からの引用だ。石垣りんは銀行員として、十四歳から五十五歳(当時の定年)まで結婚せずに働き続けて家計を支えた。「ああ疲れた、ほんとうに疲れた」とつぶやきたくなる夜もあったろうと思う。
あたしは数年前に岩波文庫の『石垣りん詩集』を編んだ。そのときこの大先輩の詩をすべて書き写しながら読んだ。そしてこの言葉に出会った。有名な詩じゃないし、だれでも書けるような言葉だけど、あの石垣りんが書きつけたんだなと思うと、心にしみた。
「ああ疲れた、ほんとうに疲れた」とあたしも毎日つぶやいている。