「先生は、おれがいなくても嘘を見抜けるんじゃないですか?」
『准教授・高槻彰良の推察』第4話。
微熱で寝込んでいる深町尚哉(神宮寺勇太)。夢うつつに、不吉な祭りの太鼓の響きと、訪問者の玄関を叩く音が混じる。真ッ直ぐな演出。台本。気持ちがいい。
看病にやってきたのはもちろん高槻で、持参のアイスクリームが溶けている。
「ごめん、途中で道に迷っちゃったからさ」「何時間、迷ったんですか?」「んー、2時間?」(ト嘘をついていることが尚哉には判る歪んだ声)「3時間以上ですね? ……散らかってますけど、どうぞ」
浮き浮きと上がり、お粥などつくりだす高槻を演じる伊野尾慧の後ろ姿に男性的な身長をあらためてみる。神宮寺勇太のほうが背は高いはずだけれどもドラマではそれをかんじさせない。お粥でフラッシュバックするのは『グラップラー刃牙はBLではないかと考え続けた乙女の記録ッッ』の「濃厚なおじや」だったりして、今回の准教授・高槻、序盤ですでに溢れる。
台本、演出、俳優のすべてが良くて、何度観ても飽きない。不出来ゆえのハラハラということがないから流しっぱなしにしておける。こういう、沁みこんでくるドラマは嬉しい。
撮影現場の幽霊のこと。
幽霊は昔から、文芸や芸術の世界で好まれた題材です。幽霊とは「しんだひと」の魂、つまり幽霊には生前の名前や事情があったはず。いまでも、お岩さんは顔が腫れ、お菊さんは皿をかぞえる姿でえがかれていますよね。
ところが、幽霊話が増えるにつれ、幽霊の生前の情報は重要ではなくなった。近世期、幽霊を題材とした絵画作品が多くえがかれました。そのほとんどが、「誰々の幽霊」ではなく単に「幽霊」なんです。その結果として起こったのは、見た目の類型化です。その類型化が、現代ではさらに進みました。おもにJホラーの影響。結果、本来さまざまな姿であるはずの幽霊が、たいてい白い服で長い髪の姿になってしまった。そしてこの撮影現場で目撃された幽霊のすべても白い服で長い髪の女性……。
幽霊話をでっちあげるにしては、つくりが甘いですよ。