ずっとトイレに置いてある。うそうそ、電子書籍で持ってる。
小坂井大輔の歌集『平和園に帰ろうよ』。暴力の歌もあればかわいいの歌もある。
値札見るまでは運命かもとさえ思ったセーターさっと手放す
白葱を噛んだらぎゅるっと飛び出して来たんだ闇のような未来が
喜んでほしくて食べた泥だんごなのに子供らみんな泣き出す
おせっかいにうるさいなぁと返すのも減ってわたしと母に降る雨
わたくしは三十五歳落ちこぼれ胴上げ経験未だ無しです
無くなった。家も、出かけたまま母も、祭りで買ったお面なんかも
「実家の犬の名前がまたもベルです」と姉からメールが久々にきた
世の中は金だよ金、と言うたびに立ってる焼け野原にひとりで
立て札に「この先キケン」と書いてあるじゃあ今までの道はなんなの
店内を試し履きして歩くとき周りの靴は星に見えるね
頂いたシュークリームが父親の膝に似ていて直視できない
生まれたということそれは世界という大きな詩の一篇になること