穂村弘『ぼくの短歌ノート』で知った今橋愛の歌が良かった。
とりにくのような せっけん使ってる
わたしのくらしは えいがに ならない
それで、電子書籍で本をさがした。むかし歌集はすぐ品切れになって手が届かなくなったりしたが、だいぶ時代は変わった。
マイナビ現代詩歌セレクション16 今橋愛『星か花を』。
あれもこれも詠う歌集。「義経忌」の少年性は出色。
どうなるかわからないしろいものがすき
少年はあしたそらをとぶかも
がっこうに行ったりしない
しろいほねみたいにみえるさくらです
てらされてここはうつつでしょうか
この歌集のなかの少年も少女もひとりぼっちでないが孤独だ。論理を獲得していないので。
あのひととしりとりしたりしてました
それいがいに?
なにしてたんだろ
黒板においつけなくても
ていねいにかきます
こくごののうと おろしたて
ほそくもなく ふとくもなく
でもゆがんでる
28のおんなのあしだ
ぱそこんもせんちめんたる
教習も入力すると郷愁という
タイを詠んだ「スクンビットソイ33」も凄い。井の中の非対称性や軽薄さでなく、どこにも見いだせる普遍的な哀しみを、発見する。今橋愛の増す強度。
目でいみをみた
まずしいって。
コカコーラの紙コップ日がなかかげるおんな
カタカナとひらがな
漢字
タイの文字
ローマ字
バンコクうけいれるまち
観光地のことばはおもさがかるすぎて
わたしはいつもめまいがします
ならんでるとけい
あふれるいろのしゃつ
ふっかけるねだん
みんなにせもの
シンハーを
飲んでも飲んでもみひらいた目に
あたらしい情報ばかり
「マユリーはくじゃくのいみです
あいさんは?」
おもわず はねを ひろげてました
いま まお と
ちいさくないたの
わたくしのなにかか
それとも おもての ねこか
きっちんで ゆめみる
とおい とーきょーの夜のこと
高いひーるのことなど