大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

母と子と父の会話。「宇宙人て、何色?」「銀色」「母さんは緑が似合うんだ」「じゃ、緑でもいい」「宇宙人て、何着てるの? 今夜は徹夜で作るわよ」「宇宙人は、何も着てない」「……親不孝者め! 母さんにはせめてTシャツくらい着させてやってくれ!」

エンドロール~伝説の父~ [DVD]
もしかしたらこれがモキュメントに対するひとつの答えかもしれない。この世のなかは時短のためにこまかく切り刻めば切り刻むほどウソとホントが分けにくくなる。だから、モキュメントにもウソのしるしがあったほうがきっとよくて、こどもにはわからなくてもおとなにはわかる、そういう演出は要るのかも。ウソかホントか画から検証できないモキュメントは怖い。
映画、『エンドロール〜伝説の父〜』(2012)。「第4回WOWOWシナリオ大賞」の映画化。売れないライターとか映画監督の夢とか、異性や親の無理解とか、いじめに遭っている子とか、はじめのうちは自己弁護的な話かとおもう。冒頭で「東京はやっぱり乱れてるのか?」と異口同音に言ってくるところなどにやや狂気をみたが、徐徐に狂気が、ばかばかしさがまさってくる。これは愛しい。わすれてはいけない映画だ。
わが子(鈴木励和)のために、りっぱなすがたをのこしたいとかんがえる病床の明生(萩原聖人)。ぱっとしないライター雄司(中村獅童)はウソでかためた明生の自伝的脚本に呆れるが、ならばいっそトんでしまえと、宇宙人を登場させたりプロボクサーと対戦させたりするものへと書き換えていく。
《ほら話》の系譜ということ。監督の石井裕也や俳優・池松壮亮の名に惹かれて観たが、中村獅童萩原聖人梶原善六平直政田島令子螢雪次朗、稲川実代子ほか皆良い。なかでもおどろいたのが子役の鈴木励和。
「ばかげたことに没頭する価値」という科白に打たれる。没頭すれば、ウソのかたまりからホントが顔をだす。