大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

「僕がチャンピオンでいるあいだは、必ず会場を満員にしますから」 竹下幸之介

#01 神田 勃発編 DDTプロレスリング「MAX BUMP 2017」観戦。Amazonビデオのコンテンツ「ぶらり路上プロレス」でどんどんDDTを好きになり、竹下幸之介を観たくて観たくて足をはこんだ。後楽園ホール
なにしろ「ぶらり路上プロレス」がおもしろい。キャラクター、パーソナリティもさることながら、路上の小道具だけではない、大道具を用いる柔軟性さ。アントーニオ本多竹下幸之介樋口和貞……巧いなぁ。


いま、プロレスラーの流動性が増していて「ぶらり路上プロレス」にも他団体に所属していたレジェンドレスラーが登場するけれども実際のリングにもさまざまなビッグネームが参戦する。
今回の後楽園ホールには船木誠勝高山善廣。高山のパートナーは男色ディーノ。高山も「帝王」ならぬ「ゲイ王」として船木にキスし、失神させる。
ゲイキャラクターも増えていて、外国人選手のロイズ・アイザックスもそう。各人がもっている必殺技とちがってゲイというアイデンティティは感染力がつよい。


ハッピーモーテルというユニットがあった。アントーニオ本多を中心に竹下幸之介遠藤哲哉もいて、仲が好かった。ところが遠藤は別のユニットに移り、ハッピーモーテルも解散。その竹下と遠藤の対決が、きょうのメインイベント。
竹下幸之介は1995年生まれの逸材、ついた呼び名が「ザ・フューチャー」。竹下はプロレスの「未来」を信じている。しかし遠藤は「今」と言われることを望んだ。水と油だ。ユニットを組んでいたときも、離れてからもじぶんたちの試合は「今」なのか「未来」なのか。
ずいぶん哲学的なイデオロギー闘争だ。つよいから「今」であるとか、つよいから「未来」だなどと言うことはできない。そしてそういう平行線が、人間関係の現実でもある。
あいてのことが理解できない。共闘し得る近さをもちながら、ぶつかるしかない。
試合はフルタイムドロー。60分の試合の時間切れ引き分け。決着がつかなかった。
そうなるほかない衝突だし、個人ではなく団体をかんがえれば「未来」に軍配は上がるのだが、個人の生は、共同体のことばかりおもいやってもいられない。「今」というエゴも必要だ。


わがままな高山善廣が「5月28日には用があるから、(ベルトを懸けたタッグマッチは)21日にしろ」とセミ・ファイナルで言った。そしてメイン・イベントのあとで乱入して28日、シングルで対戦することを竹下に要求した。こういう展開のおもしろさ、おどろく。
ゼネラルマネジャーの鶴見亜門は涙もろいひとみたい。退団を表明したヤス・ウラノのよこでは神妙な顔をしていた。試合後の竹下のまえでは泣いていた。「すごかったよ」