大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

「さみしい音だが、匂いは佳い」

山田裕貴松雪泰子の『海王星』。

寺山修司が『天井桟敷』結成前に書いた未上演の音楽劇を新生PARCO劇場でついに初演!」とチラシに。古典と呼んでもいいが、若書きである。

物語から連想されるのは宮沢賢治銀河鉄道の夜』やツルゲーネフ『はつ恋』。そしてテラヤマの母、寺山ハツ。寺山修司が得意とした借用、反転でもって『海王星』の彌平はかたちづくられている。彌平が宿命づけられているのは婚約者でなく息子の猛夫であり、BL(近親相姦)めいたものを読みとることもできる。

彌平を演じたのはユースケ・サンタマリア。亡き霊のようにその存在をぼかしたり、毒気も凄く科白したり。うたうと滑らか、透明で。「コーヒー挽き機械」の歌も、その語の可笑しさと、淋しさと、平穏をかんじられて、心にのこる。

幕開けに登場する中尾ミエも衣裳、歌唱ともにゴージャスで嬉しい。音楽劇として行き届いたキャスティング。

ものごころついたときには中尾ミエが好きだった。テレビのひとという認識だったが、映画をあれこれ観ていた時期に『台所太平記』(1963)のさいごにでてきて屈託ない少女の魅力をあふれさせた中尾ミエに一撃された。

清水くるみ好演。残酷な少女・そばかすである。

大谷亮介は、メロドラマに酔いがちな主人公二人をうまくいこと現実に引きとめていた。

 

眞鍋卓嗣の演出は丁寧。けれど劇場のおおきさからするともっとゆっくり、たっぷりでもいいかなとおもえるところも。