大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

歯向かわない人

俳優 亀岡拓次 DVD(通常版)
2026年の映画、横浜聡子監督『俳優 亀岡拓次』。原作は戌井昭人の連作短編小説。
原作をもちつつも横浜聡子の映画になっている。だから、小説も読んだ。映画の脚本というのは、いくつもの短編をひとつにまとめるときに力を発揮するのかもしれない。小説の文章はばめんを持続させるために雑学的になりがちだが、映画にはそれらをすべて削ぐというテクニックもある。そこに詩がうまれる。


キープしているボトルにおおきく書かれた亀岡拓次の文字。これがタイトルバック。すこし気が利いている。そんなふうに観ていたら、右手を怪我した亀岡がサインをねだられ利き手ではない左で不細工な字を書く。この対比におどろいたし、お品書きのよこに貼られていたそれがいつしか風で飛ばされ落ちる。その無常をことごとしくラストにしないのも流石。夢のばめんも現実とおなじように撮る剛さも佳い。
ラブストーリーになっている。原作を読むとどこかありがちでわかりやすく感傷的だったりするが、横浜聡子の映画だからスリリングで、なんとかハッピーエンドになってもらいたいと祈りつつ観ることになる。物語は、選挙の当落のように早い時点でオチが読めてしまうものなればこそ、そのラストが引っくりかえることをねがわずにはいられなくなる力が要る。
ヒロインの麻生久美子横浜聡子映画の常連だが、野嵜好美も出演していた。