大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

反復のようで、一期一会。

旅する温泉漫画 かけ湯くん

検索上位にでてこないマイナーな旅を思い立つ。観光地の、先の先。ローカル線の行き着くところ。路線図調べて、それから『旅の手帖』をチェックして、手ごろな宿があるのかどうか。

『旅の手帖』は電子書籍で買えて良い。行きたいところを扱っている号をすぐ入手できる。

巻末には、松本英子『かけ湯くん』。基本的には毎月1ページ。コツコツと、連載されてきたものが10年近くかけて単行本になった。すごい。いまもつづいているマンガ。

あっちこっちに行っている。カラーで湯の色、浴室の色。温泉をいくらか経験しているほうが、読みながら想像しやすいかもしれない。

情報でなく、リアルな幻といった趣き。ついこのあいだの話もあれば、幼時、あるいは青春期のものもある。訪れてもその体験は得られない。

たとえば、宿に飼われている犬。かけ湯くんが話しかけても顔をあげることさえしなかったのに、チェックアウトの段になって、いきなりついてくる。宿をでて、目のまえの橋。そこをいっしょに渡ってくれたという。そういう、一期一会の記憶というのは日常と一寸ちがうもの。ストーリーやドラマにもなりにくい。そこに気持ちをかさねて追体験する。これがなんだかとても佳い。