大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

恋と、秘めごと。

私たちの世代、は。俳優、といっても芸を売るよりも存在を売るという、まあそういったかんじの時間だったので。私はその時代、その時間に、じぶんがどんなことを、どういう存在であるかっていうのを売り飛ばしていたような。だからスタッフにも、本屋さん(脚本家)には特に、素材として使ってくださいっていうエネルギーが凄かったんですよ。

 

    桃井かおり

「向田さんに会ったときに『万引きしたことない子供と、いたずら電話したことない女なんていませんよね』なんて、一気にガブッとかぶりこんだ。なんていうの。ガブッて行ったの覚えてます。『そうかもね』みたいな。向田さんが」と桃井かおり

「あのひとはね、カラダで思いつけるひとだったとおもうんですよ」

 

「私なんかものすごいめんどくさい、小生意気なガキ、だったにちがいないので……。そのときに、なにか、俳優としてのヒントをくれようとしてた作品だとおもうんですね(『隣の女』は)。ブスなのにカッコいい役をやりたがっている桃井かおりに『あんたホントにブスだから』って言ってくれたのが『隣の女』だったし。『こっち側のにんげんだからね』てなんかもうね、鋲(びょう)刺されたみたいな思いですからね」

 

NHKBSプレミアム「アナザーストーリーズ『突然あらわれ突然去った人〜向田邦子の真実〜』」。

桃井かおりの証言がとても良かった。

 

観ようとおもったのは、もちろん向田邦子を読んできたから。幼時、親にすすめられたこともあってするすると沁みこんで、だから年表にして組みたてたりはしなかった。向田和子の店「ままや」への出資や、小説執筆が大病のあとだったのを初めて知った。

 

「向田さんのあの、仕事は、昭和でないと、あの“谷川岳のぼり”って成立しないのよ。昭和の匂いとか、昭和の香りとか、昭和の響きとか。なんかね、『昭和』が立ち籠めてるっていう」と田澤正稔(元TBSプロデューサー)。

いまとはちがう、生活心理。

大石静が指摘した「エロスと毒」も昭和ということかもしれない。

常識の向う側にある真実みたいのが必ずあるとおもうんですよね。そういうものを、えがける、脚本家でいたいなっていうふうにおもってます。

 

    大石静

 

桃井かおりによる、亡き向田邦子への近況報告。

「老いに関して、死に関して、長生きに関して向田さんにもうちょっとエッセイがほしい。向田さんのエッセイがほしいですね。私は生きてるってことは小洒落たことにしたいですよね。(……)向田さんの、まあ、なんていうか、息を、血を浴びた女は、こんなふうに育ってます。ていうかんじですかね」