大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

〈難民キャンプに通った。旅の技術とは無縁の、旅というものが少しわかった気がした〉  下川裕治

旅が好きだ! : 21人が見つけた新たな世界への扉 (14歳の世渡り術)

『旅が好きだ! 21人が見つけた新たな世界への扉』――「14歳の世渡り術シリーズ」の1冊。

14歳への短文ということで、舐めた仕事するひともいれば、真摯なひと、深くえぐってくる、ふんわりと仕上げる、講義調などさまざま。その読み味が大人としてはおもしろい。

〈歳を重ねて「行動半径」が広がるから大人になるのではなく、「想像半径」が広がるからこそ、人は大人になるのではないか〉と清水浩史。

「今年もまた北欧へ行ってしまう理由」というタイトルで書く森百合子は自己紹介、いまの仕事の説明から北欧の話へと、ワンテーマをひと息に展開させて魅力的だ。

初めて北欧を訪れた時に感じ、いまも忘れられない感覚があります。それは「海外に来ているのにあまり緊張しない」こと。アメリカや他のヨーロッパを旅した時のような緊張感がなかったのです。治安が良いのはもちろんですが、例えばカフェに入って注文の仕方がわからない、バスの乗り方がわからないといった不安な場面で現地の人が急(せ)かすことなく、こちらのペースに合わせて待ってくれることにほっとしたのを覚えています。

旅に出ると、今後の自分を支えてくれる価値観や言葉に出会えることがあります。私が気に入っているのは、スウェーデン人がよく口にする「ラーゴム」という言葉です。「ほどほど」「ちょうどいい」といった意味で、食事の分量から天気の話やインテリアの雰囲気を表す時にも使われます。

 

森百合子のつぎがゴリゴリのバックパッカーたかのてるこ(『ガンジス河でバタフライ』)なのもおもしろい。

ひとは旅先で、似た感覚のひとあるいは対立してくるひととつながりがちかもしれないが、土地と触れあう経験もある。温泉漫画の松本英子は基本中年の一人旅を描くけれども、ここでは21歳のこと。「当時の私は精神的にどん底でした。いろんなことがうまくいっていなかったのです」

ところが訪れた山間の湯で「田沢のぬるい ほんのり硫黄のにおいのするお湯は だれ分けへだてなくこの私にも ひじょうにやさしい」

 

第3章「こんな旅があった! 歴史上の旅人たち」はどれも興味ぶかく読んだ。倉本一宏「平安貴族の奈良旅行」。出口治明イブン・バットゥータの旅」。金坂清則「イザベラ・バード――『信念の旅行家』の旅の生涯」。春日ゆらのマンガ「夏目漱石18歳の江の島旅行」。