大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

〈平和の蔓延〉

劇団スーパー・エキセントリック・シアター 40周年記念公演『ピースフルタウンへようこそ』。

オールドファッションな台本は、吉高寿男。ゆるくて、アドリブを許容するようなつくりだけれど、そこに物語のカギがあったりする。

冒頭、三宅裕司が「あなたいま、しあわせですか」と聞こうとして小倉久寛に「あなたいま、にんげんですか」と問うてしまう。ユーチューバーとチューバッカとか、小倉久寛の容姿いじりはいつものことだが、清潔で富裕な〈ピースフルタウン〉に住む者たちはほんとうににんげんなのか? という伏線でもある。江戸を手本にしたピースフルタウン=青金台。幸福のために隠蔽される死や犯罪。

 

「リアルに犯罪ってことは、ないわよね?」

「もうずうっと平和ですし、ありえませんよ」

「そこを狙われたのかも」

 

科白のあとに、間なく暗転する小気味良さ。

要約すると、平和なもんだから、毎日ニコニコしてなんだかウキウキしちゃってフワフワして、ギスギスやヒヤヒヤがなくなっていつからかダラダラして、挙げ句の果てがフニフニよ!

ミュージカル・アクション・コメディ。ダンス対決のあとには内乱。市長以下、皆は《笑い》の必要性に気づく。「流行語というのは、にんげんの笑いの歴史」とかれらは理解し、崇高なラストを迎える。

 

ラストの演出も含め、広義のSFに入るだろう。用いられる概念が、現実に遅れをとっている気もするけれど、そこも楽しめる。

2時間におさまる舞台。カーテンコールで胸いっぱいの俳優たちがすごく好い。

なにもしゃべらず撮られているのも、よいところ

GQ JAPAN (ジーキュージャパン) 2020年04月号

髙木雄也を目当てに『GQ』2020.4。

表紙にBAD HOP。それを機縁に今号のあちらこちらにHIP HOPの有望株が登場している。さなり。Rude-α。みんな若くて頼もしい。

 

そんなふうに眺めていくと、髙木雄也があらわれた。あどけなく撮れている。かわいい。タッパがあるから不埒なレオパード柄が似合う。

リアルプライスのコーディネートはなかなか映えないものだけれども、いいかんじ。

よい歪み、わるい歪み。

嘘八百 京町ロワイヤル

嘘八百 京町ロワイヤル』観る。とても良かった。

深すぎない。ダレない。監督は武正晴。脚本・足立紳今井雅子。脚本家によるノベライズはPARCO出版から。アツい。

前作『嘘八百』は堺市、今作では京都市の協力があった由。ロケ地スタッフキャストなど。お客さん、関西で特に好調とのこと。

 

主要人物を丁寧に膨らませつつ、ゲストキャラクターたちが人間的な臭みをだしてくる。

ヒロインは広末涼子。裏表のあるなかなか良い役。竜雷太加藤雅也は悪役としてみごと。真田実(議員役)、吹越満(番組プロデューサー役)、坂田聡(番組ディレクター役)もグッときた。

「陶芸王子」牧野に、山田裕貴。重要な役だった。

だまし合い、としてのおもしろさはもちろんあるし、だれもがどこかワルなのだけど、搾取する《中央》がある。骨董屋と政治家が癒着してできた古美術修復センターだ。そこから見れば中井貴一ら中年組も、森川葵前野朋哉山田裕貴ら若者組も周縁に過ぎない。登場人物の多くは《中央》にジカンもカネも奪われながら生きている。

そういう、搾取される「王子」としてのひたむきな頑張りだったり、疑念だったり、そもそもの業界への愛着だったりを山田裕貴が演じて素晴らしかった。

牧野(山田裕貴)は野田(佐々木蔵之介)に対するミーハーなあこがれを隠さない。だからこそ、野田は牧野に真っ当な道をあゆんでほしいと、おしえられることはおしえる。

この関係が好かった。そんなBLを欲した。

 

小池(中井貴一)が娘いまり(森川葵)のおごりで焼肉を食べまくるのも良かった。「だって食べ放題だろ」

みんながつがつ生きたいんだ。

(大事な人の大事なもの 大事な思い出なんだ 守んなきゃ──)

肉食組曲(1) (ビーボーイコミックスデラックス)

ゲイ友の、肉会。

三柴信司 28歳

印刷会社営業

 

夢中になれる 仕事に 打ち込んで

休日はジムに フットサル

 

だけど

俺には

 

人には秘密の

 

やめられないことが ひとつだけ

 

 

暴食すること! 

ダヨオ『肉食組曲』第1巻。気持ちが好い。理屈をこねずに、しかもひとよりたくさん食べる。そのために運動は欠かさない。信司の性格がすでに立体的で、ひとと出会うたびいくらかの対話が要りそうな物語性をもっている。友人たちとの肉会。仕事終わりで遅れて参加して「俺今日 塩→タレ→〆 3周する」と手短に宣言するのもリズミカル。

セックスのばめんはないが、皆してそうな肉体だ。

信司は制作部の24歳・白瀬くんが気になっている。部署のちがい、年の差なんかも絶妙で。いま、肉テロ的なガイドブックをつくっている。

白瀬くん

どんな肉の色

出してくれんのかな

話は、順繰りに。肉会のひとりひとりに仕事場があり、恋のフラグが立ち、同人誌つくってる腐男子の片想いの悶えかた落ちこみかたすごく可笑しい。へんに行動的だったりして。

 

職場のあいてと恋仲になったのに、帰り道でにんにく大盛りの食事をしてる。「あんた何なんですか?!」「はっ?!」「何あんなに山盛りにんにく入れてんですか」

つながりたくて苛々してる。生活上の細かな感情の揺れをこぼさず描く。

このたくさんの美しさを見守らなければ。

「呪いによって生かされている」

ダーケスト・ウォーター(字幕版)

ホラーというほどの現代性はない。ゴシックホラー。サスペンス寄りのダークファンタジー。『ダーケスト・ウォーター』(2017)。原題は「The Lodgers」。

舞台は1920年アイルランド。さいしょの印象は『嵐が丘』。広い屋敷が窮屈でたまらない、という感覚。そこに18歳の誕生日を迎える双子の兄妹がいる。幽霊たちに守られて、暮らしている。

他と交わらない、交わってはいけない閉鎖的な生活。経済的困窮。寒々としたまま朽ちていく雰囲気は好い。レイチェルとエドワード、姉弟のほかに登場するのは戦争帰りの若者、そして昔から付き合いのある老弁護士。

多額の負債を抱えたこの家で、いくらかの延命となるような金目のものはないかと、あれこれ独言しながら値踏みする弁護士、「イギリスに返還したほうがいいのかもしれません」。

そこへ床下からの幽霊の声。「ぼくらはイギリス人じゃない」

ところどころがおもしろい。イエーツが採集した妖精たちの物語のようだ。

〈妖精たちの陽気で優雅な振る舞いを見るには、アイルランドへ行かねばならない。彼らの恐ろしい行為を見るなら、スコットランドへ行くとよい〉(イエーツ『ケルトの薄明』)

 

ことばにするとずいぶん佳い映画になってしまう。それほどでないともおもうのだが。

青春期の人物たち、というのもホラーに不可欠ではあるけれども、思春期の、レイチェルの性的な飢えが災いを呼ぶ。幽霊物語のかたちをした《罰》なのかもしれないし、なにやら責任感に満ちた弟も《罪》や《罰》を発見したがる。

 

レイチェルは、戦争帰りのショーンに恋をする。肉体由来の。

レイチェルが科白する。「憎悪より邪悪な愛もある」

そのあとに言うのは「あなたの義足を見せて」。

ショーンだって年頃だから、求められているのをかんじとれば、惹かれる。しかし奇異な部分をみつめられれば反発もある。

「きみにはわからない。これが戦争だ」

 

レイチェルは幾度もじぶんたち姉弟や亡き父母のヴィジョンを視る。それは全裸だ。床下の幽霊たちも全裸。ピーター・グリーナウェイの『プロスペローの本』を連想、こちらもシェイクスピア『あらし』。風雨のなかの物語。

 

監督、ブライアン・オマリー。

カッター。

ベスト・オブ・イヨネスコ 授業/犀[新装版]

楽園王、長堀博士演出によるウジェーヌ・イヨネスコ『授業』観る。2004年の利賀演出家コンクールで優秀演出家賞を受賞し、再演をかさねている作品。

ダブルキャストのTEAM.Aを観劇した。教授は岩澤繭、マリーに小林奈保子。生徒1 日野あかり、生徒2 杉村誠子。

 

この教授は、じぶんの正しさに酔える権力者である。あいてを下に見ている。生徒は生徒で、勉強をしなければいけないと、おもいこまされている。

たいていの演出家はこの教授に男性を、生徒には女性をあてる。そうすると、社会における暴力や差別、男と女の問題が浮き彫りになる。

教育熱心で、興奮のあまりかならず生徒をころしてしまう教授の話だ。それがすぐに露見しないのは共犯者のマリー(女中、である)がいるから。

教授のレッスンはナンセンスで笑えるものでもあるのだけれど、男の俳優が演ればいかにも残忍。長堀博士は、教授に女性をキャスティングする。そのためずいぶんやわらかくなる。フェミニズムジェンダーが消える代わりに、暴力や差別が政治にまつわるものとして顕になる。

 

この部屋の外を時折アメリカ兵がとおるようなのだ。靴音、国旗の演出でそれと判る。

戦下である。死体をまえにうろたえる教授に、ナチスの腕章をつければだれも不審がらないとマリーが言う。敗色は濃くなりつつあり、教授の権力は失われそうだ。だからかれはすぐに常軌を逸してしまう。

 

マリーはちからづよく、生徒2は表情が豊かだった。

「僕はやんちゃじゃないと思います。めちゃめちゃ真面目。それに、セクシーでもない」  平野紫耀

ViVi(ヴィヴィ) 2020年 03 月号 [雑誌]

『ViVi』2020.3、「クラクラするまで平野紫耀」。

若き日の、木村拓哉のようなものだ。なにも、言うことがない。宿した色気を讃嘆するか、シッシするかのどちらかだろう。

批評を必要としない。ひとの願いや未来とも無縁。それが美しさなのだけれども、声をかけずにいられない。それで、質問というものがでてくる。生まれる。美しさがなかからどんどんおおきくなる。

ファンからの、たくさんの質問。

Q17. なってみたい動物は?

A17. スローロリス

Q28. ジャニーズに入って一番うれしかったことは?

A28. ジャニーさんに会えたこと。

いつかの番組で、ものを食べるスローロリスにジャニーさんをかさねていた。そういう、事象をよみがえらせる力がすごい。要所要所を押さえて、あとはシンプルなのだ。

Q33. 2019年のことを漢字1文字で表すなら?

A33. どんな一年だったか、ちょっと2019年のスケジュールが思い出せない‥‥‥。映画やって舞台やってバラエティ番組やって、それにツアーもやって。

だから眠」! ずっと眠かったです(笑)。

 

Q29. メンバーの好きなところを一人一つずつ!

A29. 岸(優太)くんは可愛いところ。

神宮寺(勇太)はバカなところ。

(髙橋)海人もバカなところ。

(永瀬)廉は、う〜んバカなとこ。

(岩橋)玄樹もバカなとこ(笑)。

岸くんは、バカ可愛い。

King & Princeはそれぞれに頑なで硬質で、だからあのひとこのひとと見かえすときらりと凄く、屹としたまま可愛いところがくすぐったい。