『WOW! いきなり本読み!』#1 。
脚本・演出は岩井秀人。今回の本である「ごっちん」にぶっつけで挑んだのは水川あさみ、上白石萌歌、皆川猿時。
台本を与えられ、指示を受け、意図を汲み、演じる。一人で何役も掛け持ちしたり、ばめんが変わればちがう役を担当するなど、フツウの本読みよりもハードである。息の抜けない身体表現。そこに議論はない。演じることだけがある。
読解とか理論とか、台本の外でああだこうだしゃべらないのが好い。岩井秀人はダンディだとおもう。
そしてすこしおかしな本が多い。「ごっちん」もまた。予想していないほうに話が転がる。いいかげんといえばいいかげん。けれど議論や芸術よりもずっとおもしろい。
ごっちんは身長2mの、筋肉質で黒光りする肌をもつ小学3年生の女の子。悪ノリのような設定だが、そこにリアルな感情を乗せていく。男子への恋心や、女の子同士の友情。
水川あさみや皆川猿時が怪演しても、生まれたリアルは壊れない。ヒトの声や肉体を用いることのコストと意味。観客は共感、感情移入しそうになる。すると見透かしたみたいにいいかげんな展開をして、揺さぶってくる。
俳優たちは演じながらよく笑う。かたちにならないものが躍っているから。
「いきなり本読み!」を観て得たものの一つは、俳優が皆笑っているということである。もちろんほんとうの稽古で笑ってばかりはいられないだろうけれども、表現に、死神の如き苦悩を寄り添わせる必要はない。