大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

バディ(男×男)

「にんげんなんて所詮ぬるぬるですよ」

『ハッシュ!』、2001年の映画。2001年の高橋和也と田辺誠一がゲイのカップルを演じる。監督、橋口亮輔。にんげんの短所が真ッ先にでてくるような描きかた。これをやると登場人物を多面的にえがくのに時間がかかる。 行きずりのセックスを厭わないような、即…

がっちゃん「昔は隠すのみで、SMと言ってもSMと言っても、言っても絶対にお客同士は会わないのが普通でしたから。SMバーで客同士がみんなで会話をするようになったのなんて、最近の話だと思いますよ」

二村ヒトシ、金田淳子、岡田育のトークイベントがまとめられた『オトコのカラダはキモチいい (ダ・ヴィンチBOOKS)』。発言者のプロフィールを知らずに読んで、岡田育を年配の腐女子だとおもっていたら、金田淳子のほうが年上だった。BLに対して現役なのが金…

古墳的魔術

『DENKI GROOVE THE MOVIE? 石野卓球とピエール瀧』観る。監督は大根仁。なにしろ気持ちが好い。ひとを自由にするものはストーリーではなくて画だ。画の蓄積や、画の選択。圧縮。快楽。電気グルーヴはメロドラマ的な詞に頼らないし、この映画も動的に静的に…

〈たしかに単純で馬鹿なところもあるけど けどそういうとこだって俺にとっては眩しくて〉

佐倉しいね『明日は言えるかな (ショコラコミックス)』。“甘酸っぱい”初恋の女子と男子がいて、男子の勇気待ちという、そういう“明日は言えるかな”。週刊少年マンガっぽい男子のよこには、カムアウトも愛の告白もできない男子。 だれにもカムアウトできない…

〈自戒した俺よ 忘れるなよ〉  上京まで

絵津鼓『SUPER NATURAL (Canna Comics)』。ふしぎと遠くて、なつかしい。学園物はにがてだけれど、職業や将来をわすれてはいられない専門学校が舞台のせいか、かなしく澄んでいる。美容科。関西弁で。みごとに標準語的な日常から切り離されている。 そういう…

『まんが道』はAF(アナルファックではなくてA×F)

東京堂書店、「サンキュータツオ×春日太一の文化系食わず嫌い講座──BLの豊饒な世界 第3回 発展編」行く。 お二人、前日のクロヤギ交えてのイベントの感想からはじまる。恋バナ。恋バナそっくりの恋バナ。「なりチャ」の話。 芸人クロヤギが「なりチャ」をし…

「この外見なら 中身が誰だって構わないんだな」

コモトミ裕間『ようこそニューワールド (BABYコミックス)』。絵はやや古く、未熟だけれどもおもしろかったしエロかった。意趣返し、リバ、目覚め。正義と悪がないまぜになっている。愛することや征服することのむずかしさ。 俺がわざわざ“アノ写真”ちらつか…

〈「もし」ってやつは、星みたいに無限なんだ〉

『週刊文春』2015.9.10、「私の読書日記」は穂村弘。 紹介されているのは池辺葵のマンガ『プリンセスメゾン』、沼正三『マゾヒストMの遺言』、それからサリー・ガードナー『マザーランドの月』。 マザーランドの月。一冊の本ではあるけれど、ヤングアダルト…

「〈殺しのライセンス〉は〈殺さないライセンス〉でもある」

『007 スペクター』、ずうっと笑いながら観た。洗練の果ての野蛮なのだ。世界にはまだ泥くささがのこっている。「情報」という言葉には洗練だけがあるけれど、「諜報」は泥くさい。官僚的、グローバリゼーションといったかたちで007たちが否定される。部門は…

「証拠でもあるんですか?」「ない。ないから、おまえだって言ってるんだ」

『キャバレー』(1986)、作り手に愛された作品だったのだとおもう。原作は栗本薫。角川春樹事務所創立10周年記念作品。出演者は豪華。冒頭で北方謙三観て「おっ」とおどろいたり、チンピラ役の宇崎竜童が海に落ちたり、三原じゅん子が駅弁ファックされたり…

「あったけぇからだよ! ホームレスの方々だって段ボールのうえで寝てるだろ? あれは、あったけぇからだよ」

池松壮亮、マキタスポーツ、デビット伊東、鈴木拓、佐野史郎ほか、出演者の名を見るだけでスルー厳禁と判る。しかし知る機会がなかった。 2013年の長編『この世で俺/僕だけ』(監督、月川翔)。赤ちゃんの扱いかたや場面転換に『トレインスポッティング』の…

「その戦果を誇大に伝えんために、一つの首を二つに断ち割り、四万五千個の首を得たと称して、勝利の酒に酔ったという……」

「おまえが望むなら、わたしがこの世に連れ戻してやろう。もう一度生きてみたくはないか? より強く、より美しい若者として」 「そちのことを想えば、わしの心は尚更にときめく。生涯の好敵手に巡り会ったときのように。今もし、わしに未練ありとせば、そち…

百合も薔薇も知らない男子が百合を見て薔薇に気づくということもある。

明るくヤンチャな真嶋と、まじめでぼっちの園木。どちらも、身のまわりのだれかを当てはめることができる。二人のなかに、何人もの知人。 たなと『あちらこちらぼくら (ビッグコミックススペシャル)』。真嶋がぐいぐい入ってくる。園木が戸惑う。これが、BL…

(あぁ……矢野さんの生活音が聞こえるって幸せ…!!) シャワーの音をしっとりと盗み聴き

「矢野さんお休みって何日ぐらいですか? すぐにまた大阪行くんですか 矢野さんオレ何度もメールも電話もしたのに…どうしてお返事くれなかったんですか? 忙しいんですか 矢野さん大阪ではどこに住んでるんです? 次のお休みとかわかります? 今後の予定とか…

表題作。それと「ヤングアンドラブリー」

俺の気になる奴は その頃 既にほぼ 「あっち側」にいたんだけど! この「あっち側」というのはゲイとかBLとかを指すのではない。十五歳。チーマー、愚連隊、不良といった「あっち側」。 ロミオとジュリエットのように家と家、家と個人が対立する必要はない…

「いーんだよ、身内に手ェあげられてんだぞ」「絶対きっかけ待ちしてましたよね…」「ア?」「なんでもないです…」

はらだ『よるとあさの歌 (バンブーコミックス Qpaコレクション)』。絶品。絶句。 はじまりは、尾崎南を想わせるような潜在的好意と好意のぶつかりあい。ところがそれは物語の長編性と主演がだれかを伝えるためのもので、「ヨル」のまえに現れた兄妹は一旦退…

書影は玉川奈々福による資料、小沢昭一『私は河原乞食・考 (岩波現代文庫)』。 青山学院大学総合文化政策学部・青山BBラボによる「LGBTって何だろう? Vol.06 『日本の伝統芸能に見る男と女の境界とは?』」を聴く。登壇したのは浪曲師・玉川奈々福、KADOK…

「カルタゴは、殲滅されねばならない」……英国コメディのごとき執拗さ

塩野七生『男の肖像』。紹介されるのはペリクレス、アレクサンダー大王、大カトー、ユリウス・カエサル、北条時宗、織田信長、千利休、西郷隆盛、ナポレオン、フランツ・ヨゼフ一世、毛沢東、コシモ・デ・メディチ、マーカス・アグリッパ、チャーチル。 おお…

〈日本の景色なら ブタの散歩もこんなに 非日常的には見えねぇんだろうなぁ〉

京山あつき『ヘブンリーホームシック (on BLUE COMICS)』。 『ロンドン勤務』 カッケー!! 浮かれて 友だちに見送られて飛び立った 真冬のヨーロッパ ひと月で孤独の闇の限界に達した── そこで再会したユキサダ。〈ユキサダが…泊まってくれる 今日は──泣きな…

それでいて「あっさりくっついた」

京山あつき『すのーふれーくす (H&C Comics ihr HertZシリーズ)』。 「雪の中で運転すんの初めてだわ オレ これホントに上から降ってんのかな? 前からみたいだスゲー」京山あつきのマンガのなかの外気の感受が心地好い。先生にあこがれたり弟の後輩にときめ…