大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

映画

「おれの父親がもっとマシな人間だったら……」「いまのあなたはいないわよ。あなたって、学校や町の誰とも違っている。それはお父さんのおかげだわ」

じつはいま、「なにかが起こっている」…… 『モンスタートラック』(2016)、油井から未知の水生生物が飛びだし、2体は捕獲したものの、のこる1体はどこに? きっかけはこのようなかたちで、採掘する企業が「追う者」として物語ははじまる。高校生の主人公(…

「なにか困ったことがあるたび電話してたら日が暮れちまう」

『だれもがクジラを愛してる。』(原題 Big Miracle)、2012年の映画。実話。舞台はアラスカ、1988年、大統領はロナルド・レーガン。 コククジラの救出の中心に自然保護団体グリーンピース、というそれだけで拒否反応をおこすひともいるけれど、どんなもので…

途中、いろんなひとと出会う。取材する。ときには共に歩く。

ジョン・ミューア・トレイル踏破のドキュメンタリー『Mile... Mile & a Half』(2013)。 およそ4週間かかる340kmの自然道。補給のための合流箇所もあるし、どんなハイカーでもチャレンジしやすい。仕事を休む必要があるけれど。 監督はジェイソン・M・フィ…

共依存すれすれ。サイコスリラーだから、その関係が壊れなければ先に進めないけど。

『ABC・オブ・デス』の一篇「Youngbuck」のことをずっとかんがえている。鹿狩り。銃と自然と残虐性。アメリカ人のなかには狩りにある種の興奮を見いだすひともいる。ハンティングにおける極度の興奮を性的な残忍さと結びつけるのは分析としてはありそうなこ…

「なぜ作家の写真は10歳若く見えるのか?」

『ミラクル・ニール!』(2015)、サイモン・ペグ主演、監督はテリー・ジョーンズ。会議する宇宙人の声にはジョン・クリーズ、テリー・ギリアム、エリック・アイドル、マイケル・ペイリンも。 物語として登場人物を信じるおもしろさに加えて、モンティ・パイ…

「自然学者のジョン・ミューアが言っているよ。『パン一切れを持ち、垣根を飛び越えろ』」「垣根のなかはぬるま湯ってことか」

ロバート・レッドフォード主演の『ロング・トレイル!』(2015)、監督はケン・クワピス、脚本リック・カーブ(マイケル・アーント)とビル・ホールダーマン。製作には(もちろん)ロバート・レッドフォードの名も。 原作はノンフィクション作家ビル・ブライ…

完成は死だが魂は続く

26編のオムニバス『ABC・オブ・デス2』(2014)、良かった。おもわず買った。 テーマは「死」。そこには酷薄もあるし不条理もある。監督のえらびかたが巧く、バラエティにも富んでいた。 さいしょに仰天したのが「Badger アナグマ」。自然をあつかう番組のパ…

低予算だからグロい。それをさまざまなお色気でカバーしている。

『ABC・オブ・デス』(2012)、「死」をテーマにしたAからZまでの26本、短編ホラー映画集。 肌が合ったものから言うと、女体をまえに自慰をして、先にイかねばころされるリーグ戦「Libido 性欲」(監督ティモ・ジャヤント)。しゃべるインコがにんげんの浮気…

「DNAに蓄積してきたものが、僕たちにも伝わってるんだ」「トカゲであった頃からの記憶?」「陸上競技のトラックに立とうとする人間は、たぶん、物覚えのいい遺伝子を持って生まれてついてしまったんだ。追体験しようとしてるのさ。遠い昔の快感を」「セックスもおんなじ?」

1994年の映画『800 TWO LAP RUNNERS』。監督は廣木隆一。脚本加藤正人。 原作の小説は川島誠『800 (角川文庫)』。 川島誠は児童文学に《性》をもちこんだ野心的で魅力ある小説家であり、それが要るひと要らないひとで評価が分かれる。 映画も、のっけから体…

「接待とは五分と五分の力やす。競り合ってるときの決め手だす。力がちがうときには接待でごまかされません!」

とんねるず主演、森田芳光監督『そろばんずく』(1986)。 森田監督の映画には古典落語みたいなハナシと新作落語みたいなハナシがあるが、『そろばんずく』はもちろん後者。 あたりをやさしくつつむ円熟は、まだない。攻撃的な批評精神。それをひとは「わけ…

毛穴世界

『妖怪ウォッチ 空飛ぶクジラとダブル世界の大冒険だニャン!』(2016)。 ケータ役の南出凌嘉とカンチ役の福田徠冴がかわいい。エンディングで踊りきる南出凌嘉を観れたことでこの長編の価値はあった。 物語としては、冗長で展開がすくない。登場人物全員チ…

劇的、とは皆に見せ場があるということ。

『亜人』観る。いたいけな想像力で出来た物語。そこに乗っかってケレン味たっぷりに演じる綾野剛と、リアリズムで応ずる佐藤健。この対比は佳かった。 銃撃戦の凄さへと日本映画が進化していくのはマンガ原作が増えたためか。 深みのないキーワードをリフレ…

さいしょの発症には時間をかけて、場面転換すると被害が拡大しているという組み立てかた。

『ソウル・ステーション パンデミック』観る。韓国。アニメーション。ゾンビ映画。監督ヨン・サンホ。 しがらみや、執着。人間関係をしっかり描くからただの追いかけっこにはならない。その関係も正しさを説くようなものではなくて、DVのヒモがヒロインをま…

〈この幸福の種子は 鳥・猫・犬 それに人などによって あちらこちら、はるか遠くの町までも連れてゆかれます。時には、高架線をくぐり、踏み切りを越え、夜の電車に乗り、よその町まで連れてゆかれます〉  三好銀「静かなおみやげ」

野嵜好美と宇野祥平がでている横浜聡子の短編『おばあちゃん女の子』(2010)は気がかりなタイトルで、さいごに参考作品として高野文子「田辺のつる」が挙げられれば成程すとんと腑に落ちる。 併せて挙げられるのが三好銀「夜の電車」。 「あのね…実はね、お…

daydream

ミシェル・ゴンドリー監督『恋愛睡眠のすすめ』(2006)。ものをつくろうとする若いおとこの奇矯さ。それが天然だけにつらいが愛しい。 ものつくるにんげんにかぎらないのかもしれない。愛情に飢えたおとこの手に負えなさ。 ステファン(ガエル・ガルシア・…

歯向かわない人

2026年の映画、横浜聡子監督『俳優 亀岡拓次』。原作は戌井昭人の連作短編小説。 原作をもちつつも横浜聡子の映画になっている。だから、小説も読んだ。映画の脚本というのは、いくつもの短編をひとつにまとめるときに力を発揮するのかもしれない。小説の文…

だんだんおもしろくなる映画。しっかりつくってある。二度観ると、丁寧な仕事におどろく。

腹話術人形と腹話術師の物語。2007年のホラー映画『デッド・サイレンス』。 あたらしいせかいをつくろうというよりも、これまでにあったせかいを完成させようとしている。 へんな話だけれども、ある種の共感を得ようとしている。監督ジェームズ・ワン。脚本…

主人公のエンダーが、少年期のウシジマくん(狩野見恭兵)をおもわせる

「権威に対する反応が複雑。高圧的な《父》を喜ばせたいけれど相互的な愛が欠如していると、嫌がる」「彼は孤独のままでいい」 「皆、いつか負ける。面接の代わりにゲームで彼の心を探ります」「彼の感情に興味はない。強い指揮官になってくれればそれでいい…

擬似親子。教育。わかり合うことのむずかしさ。(性交可能な恋人とちがって)

冒頭のナレーションで〈ニューヨークは一種の密室だ 鉄とコンクリートと下水道に囲まれている 逃げる道はないし逃げる気もない 我々はここで繁栄してきたここには恐怖という刺激剤がある この街を愛している〉と。 都市をあつかう小説のような、街の定義。『…

異国のTOKYO三篇

2008年のオムニバス映画『TOKYO!』。監督したのはミシェル・ゴンドリー、レオス・カラックス、ポン・ジュノ。各話錚錚たる日本俳優が出演、レオス・カラックスの作品にはドゥニ・ラヴァン、ジャン=フランソワ・バルメール、ジュリー・ドレフュスも。 ミシェ…

『呪い襲い殺す』の前日譚『ウィジャビギニング』(2016)。 怖い。イマジナリーフレンドをもちやすい年ごろの少女がだれよりも交霊でき、亡くなった父が隠していた分厚い財布を家の奥からみつけだす。生活に困っていた母たちはおどろきながらも感謝する。こ…

目につくところにあらわれる「HI FRIEND」の文字。追ってくる。逃げられる?

『呪い襲い殺す』(2014年。原題「Ouija」)。 外国の降霊ごっこに用いるウィジャボード。冒頭は、原題どおりにウィジャであそぶおんなの子ふたり。単刀直入で、頼もしい。 ふたりはハイティーンになり、ひとりはしぬ。ここから30分ほどはたいし大した怪異も…

POPな演技と三枚目の違いなど

『HIGH&LOW THE MOVIE 2 / END OF SKY』観る。非ハイロー民だし非FF民だし非米米民なので舞台装置物物しくスタイルはあるが展開は稚拙というのがニガテで、それでもLDHずきのノンケの趣味に合わせて一緒に。 そいつのチケット代にコーラにキャラメルポップコ…

二人、キスをして「生きのこる確率は53%に上がったわ」「100にしよう」

リアルタイムに劇場で観たらどういう気持ちになったかわからない。『ジェイソンX 13日の金曜日』(2001)。 ティーンでホラーでSFで登場人物たちは発情していて脚本は馬鹿馬鹿しい。おとこの子たち個性的で皆かわいい。 パラマウント映画に捨てられニュー・…

コロラド 遊園地 ロックバンド 夏

10年近く経ってからのオマージュ的続編。『ラストサマー3』(2006)。製作国でも劇場公開されていない。 低予算で、俳優が弱い。色味を落としてざらざらしと、画面にホラーっぽい暗さはあるものの、そのためにおびえる子らのきらきらした輝きはうしなわれる…

「世界が変わるって、期待したのに」

「かれら(アインシュタインやノーベル)が生てきた時代と今は違うよ。だって、おれが何か実験したって世界中でニュースになる時代なんだぜ」 「こういう時代だから、わたしの仕事もあるんだけど」 「こわいものに片棒担いでいられるのも、そう長くはないぜ…

「あそこのクラブハウスの、エビフライ……ぱふぱふしてて、少し締まりがなかったでしょう?」「社長。長野でエビフライを注文するほうが悪いんじゃあ……」

森田芳光監督作品。監督が亡くなったあとに森田組のつくった『の・ようなもの のようなもの』を観はじめたら、引っかかることのない流暢な会話がつづいて「あ、コレジャナイ……」。 『の・ようなもの のようなもの』は一旦置いて、『僕達急行 A列車で行こう』…

リゾート、という密室劇。

ヒロインはジェニファー・ラブ・ヒューイットとブランディ。煮えきらない彼氏の話なんかして。クイズに答えてバハマ旅行が当たっちゃって。 『ラストサマー2』(1998)、前作から1年。ジェニファー・ラブ・ヒューイット、まだ逃げている。恐怖が消えない。…

1997年の映画『ラストサマー』。脚本はケヴィン・ウィリアムソン(『スクリーム』)。監督ジム・ギレスピー。 軽率な若者たちがクルマでひとを撥ねてしまい、なかったことにしようとこれを「秘密」にするのだけれど、一年後、何者かによる復讐がはじまる。 …

「引っつかんで来ちまったが、あんたはまだちっちゃいし、母さん父さんさぞかし心配しとるだろうな」「わたしには両親いないのよ」

『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』(2016)、原作ロアルド・ダール、脚本は『E.T.』のメリッサ・マシスンというところから、スティーヴン・スピルバーグ監督の思い入れがはじまる。 ロアルド・ダールのおかしな小説を、ティム・バートン方向でなく…