大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

マンガ

「俺のことはそいつが一番ようわかっとる」

小玉ユキ『坂道のアポロン』第3巻、4巻。好きな映画監督にトラン・アン・ユン、オススメの漫画『西遊妖猿伝』──なかなか硬派な趣味をお持ちで。ここに「あと大林宣彦監督の尾道三部作は大好きです」と足されるので、ああ大林監督のオカシイ部分も汲めてるん…

長崎

舞台は長崎県の佐世保、1966年。長崎は骨太だ。ひらかれていて国際的で、それでもどこかに封建制がのこっていて、だからしっかり戦わなければならない。 小玉ユキ『坂道のアポロン』。すごいタイトル。だれがアポロンなのかとこちらにかんがえさせる。そして…

「ここ…俺の部屋だよな…一瞬他人(ひと)の部屋のような気がしちまったが…」

(モーニング KC)" title="BOX~箱の中に何かいる~(3) (モーニング KC)" class="asin"> 諸星大二郎『BOX~箱の中に何かいる~(3) (モーニング KC)』。パズル、ゲーム、ルールの収拾がつかなくなって──規則から逸脱することのない物語も困るが──台詞の量が増えて…

「光二君は谷さんたちの時も手伝ってくれたし……その…頼りにもなるし……それから……」「ど真ん中ですか?」

諸星大二郎『BOX~箱の中に何かいる~(2) (モーニング KC)』。 「あたし 気付いてたんです あなた 実は 男が好きな人ですよね?」

「何かすごいことが起こってあたしの日常を吹き飛ばしてくれないかなと そんな風に思っていたんです」「すごいこと? お前 霊感少女なんだろ なら日常はすごいことばかりなんじゃないか?」

『BOX~箱の中に何かいる~(1) (モーニング KC)』。諸星大二郎のアンテナにいま引っかかっているものを、ひとつの箱のなかに入れて物語に仕立てあげる。短編でもなく、連作でもない不可逆的なホラーコメディ。全3巻。 登場人物の光二と惠がBL! といって読みす…

「いつか誰かが言ってた 神様はあんまり四郎が可愛いもんだから 四郎の一部をもっていってしまった だから四郎は神様に近いのだと……」

水木しげる『神秘家列伝 其ノ四 (角川文庫)』。あつかわれるのは仙台四郎、天狗小僧寅吉、駿府の安鶴、柳田国男、泉鏡花。 話の運びが巧い。画も。 青年期の泉鏡花、幼年期の柳田国男がかわいい。同時代の二人だが、怪異への接しかたはちがった。 柳田国男『…

〈そいつの声を聴いたのは 思春期の頃 おまえは自分を異常だと思ってるんだろう そしてそうじゃないと誰かに言ってほしいと思ってる 心の声とはそういうものだとわかっていたので気にしなかった 人は自問自答するものだということも〉

俺は灰島かなで いくつかのアルバイトをかけもち 小劇団に身を置く25歳 恋人の森田勇紀はバスの運転手をしている30歳 舞台の上では老人にもなるし 幼児にもなる 時には女になることだってある 30だろうと 60だろうと 学生や子供になり切るし それが許される…

恐怖のなか 頬に触れたあいての胸を《熱いっ》とかんじる 現実に引きもどすひとの熱

「ズル休み以上でも以下でもないの ズル休みなの!!」 「なら‥‥今日休んでみて今どんな気分か教えてくれないか?」 「あのね‥‥店長の なんかそういう意味あり気な含蓄系のね‥‥味わうような話 今したくないの 悪いけど‥‥もう全身ささくれだってるから!!」 「深…

「お前が言う通り努力で金(カネ)は取れねえし ましてや見せるもんでもねえ」「なんだ またもう〜」「けど お前は知らねえだろ プロのリングにとぐろまく努力が産み出す執念の怖さをよ」

このマンガを薦めてきたトモダチは、天才だった。あるいは天才をトレスするのが上手だったというのかな。 そいつが、そいつ自身を石川凛にかさねて視るのは判った。ジャンルはちがうがおなじような上り下りと血縁関係。 おもってまわりを見わたすと石川凛に…

〈石川‥‥‥おメ 一発で 見づけられだみでだな〉

新井英樹『シュガー 6』。 「‥‥会長 私を都庁に追いやってプロテスト受験予定だった大林をひきずりおろしてまでして そのうえ ほんの4ヵ月も待てば受験有資格年齢17歳になる石川を年齢詐称戸籍偽造までして 急いでプロにさせた理由をお聞きしたい」 「ボクシ…

いちばんちかいボクシングマンガは江口寿史『エイジ』

「『4次元ボクシング』だけどね‥‥」「いきなり本題っ!!」「そのためにわざわざ僕を呼び出したんじゃないの?」「あ‥‥れ もしかして‥‥ご機嫌ななめ?」「のこのこやって来た自分の若さに少し‥‥ね」「『のこのこ』させましたか?」「した‥‥ね」 新井英樹『シュ…

板前修業をこなしつつ

ステップインのスピードが一定 パンチの角度もリズムも一緒 それは当たらないよ 天才がある石川凛の青春期、だが、幸運なことに年長の天才と出逢う。 「どう思う? 関根さん」「はい?」「カレ『距離』ナメてるの?」 連れションを好む《絆》には同世代の切…

〈ふいに‥‥リアルがかぶってきたり ウソくさくなったりで わけわかんね〉

「私さ‥‥リンの言うなりだよね」「は? どっちかっつーと!! オレが千代の奴隷だべ!! 王様は千代様」 十代の恋愛だなあ。どちらも見誤っている。 新井英樹『シュガー 3』。 したっけ したっけ したっけ その男同士二人がなんかイイわけ!! 別れ際 なんかっ ジ…

〈窮屈で怖くても檻から出ない 手は地につけない 転がらない〉

新井英樹『シュガー 2』。 「欣二さんも‥‥スゴかったスよ‥‥全盛期 欣二さんにはオレ勝てないっス ヒーローだから オレが勝っちゃ 具合 悪いっしょ 欣二さんの拳にしたってね‥‥全盛期に比べたら見る影ないっスよ」 「ジブン勝てるゆうてんか?」 「う〜〜んん…

(大空と大地の中で  松山千春)

友だちに心配されて生きている。といって年下の友だちに分配できる時間や金があるわけもなく、痩せ我慢のダンディズムがこちらとあちらをつないでいるから言葉で問うたり答えたりはしない。 ぽつり、ぽつりとマンガを薦めてくる。 新井英樹『シュガー 1』。 …

〈この幸福の種子は 鳥・猫・犬 それに人などによって あちらこちら、はるか遠くの町までも連れてゆかれます。時には、高架線をくぐり、踏み切りを越え、夜の電車に乗り、よその町まで連れてゆかれます〉  三好銀「静かなおみやげ」

野嵜好美と宇野祥平がでている横浜聡子の短編『おばあちゃん女の子』(2010)は気がかりなタイトルで、さいごに参考作品として高野文子「田辺のつる」が挙げられれば成程すとんと腑に落ちる。 併せて挙げられるのが三好銀「夜の電車」。 「あのね…実はね、お…

「性格のわりに大人しい局部だな。」

友だちを無理矢理お化け屋敷につれていったら、数日して、江野スミを薦められた。お化け屋敷で行列しているあいだ散散暴力の話をしたせいかもしれない。 江野スミ『美少年ネス 1 (裏少年サンデーコミックス)』と『たびしカワラん!! 1 (裏少年サンデーコミッ…

〈門番を雇ってしまったので門を作ることにした〉  寺山修司

モンストコラボで『七つの大罪』。全然知らないがバンに一目惚れして課金、ゲットする。 かるいチェックのつもりでアニメやマンガの『七つの大罪』に触れたら、おもしろくってビックリした。テキパキと大胆な筋運びだけでなく、ガッツリ恋愛をえがいている。…

(部屋掃除してメシ作って 彼女か? お前は俺の彼女か?)

前略 お母さん お元気ですか僕は東京で友だち100人作ろうとしましたが 見事サぼっちになってしまいましたでも安心してください… イメチェンしたらゲイのおじさんにモテモテ! 東京での生き方がやっとわかってきた 博士『ごめんしたって許さない (gateauコミ…

〈大学で募集してたインターンシップで来てみた会社は いろんな大人がいてキモイ〉

5年後。 〈オレは大人になったけど この人はあまり変わらない 29才 もうすぐ30 今集めてるもの ドローン そこそこの給料で それなりの部屋を借りて ドローンで遊ぶ〉 京山あつき『スリーピング・バグ (Feelコミックス オンブルー)』。語り手である「オレ」潤…

そしてそれは裏切られなかった。

『BABY vol.11r (POE BACKS)』。 井戸ぎほうによるアンソロジーの表紙。ああこの作家は信用していいとおもえた。

同性間のマゾヒズムとサディズム。井戸ぎほう『夜はともだち (POE BACKS Babyコミックス)』。 「立てる? 汗かいてるからシャワー行ってきたら」 「真澄 いつも ほんとに 本当に ありがとうございます ほんとに…ありがとう…」 「…やだな もう済んでるんだか…

「ハチミツ アワふいてる」「ナマだからね」

1990年代以降の萩尾望都にハマッたので、ヒトやモノがさまざまな音を立てるなかを生き延びたり優しさで呑んだりしている社会性と非日常の描写愛しく、その方向でポーの一族されると快感をおぼえる。 アランが、岩橋玄樹みたい。現代の匂い。それでいて(それ…

美しさ。物語。発見。

表紙の子が、美しい。麗しく受、となれば当然荒廃していて物語をもつことができず、ヒロインとして《騎士》をこいねがうほかないのだけれど、ロマンチックに待つよりも《騎士》の側から発見する話のほうが読み手としては胸が高鳴る。 出逢う二人にはコントラ…

あこがれ うらぎり こころのきず

絵本とか、歌の匂い。そういうものを愛したい。 志村貴子『起きて最初にすることは (シトロンコミックス)』。みじかいことばですべてを語り、おなじことばを用いながら深く、するどく展開する。 起きて最初にすることは 君より先に目を覚まし 君の寝顔を確認…

「いっそポルターガイストに転向したら? 喜ばれるよ あーいうの」「あっ あれは外国のユーレイにしか出来ない高等技術です!!」

清水玲子の初期短編集『100万ポンドの愛 (白泉社文庫)』。掲載されたのが昭和57〜59年、時代のリズムというものはあるけど、書き手のセンスは変わらない。 どんなジャンルもそうかもしれないし、そうでないかもしれないけれど受け手を見定める必要ということ…

萩尾望都「私は自分のどす黒さを花と星でごまかしながら描いているんですよ」

この号だけkindleで読める。萩尾望都『ポーの一族』新作に対する反響が大きかったのだ。 『月刊flowers 7月号 [雑誌]』。 少女マンガの瞳はいいな。色気に満ち、かがやいているのにかなしみをかんじさせる。

「目には見えないけれども感じられるカミを誰もが表現し身近に見ようとするのは当然だ それは大昔から人間の本能なのだろう」

水木しげる『神秘家列伝 (其ノ2) (角川ソフィア文庫)』。紹介されるのは安倍晴明、長南年恵、コナン・ドイル、宮武外骨。 安倍晴明の章で〈例えばカラスがどこかの屋根でカーと鳴いたとき 不吉な感じは誰でもする しかしそのカーがどのように不吉なのか その…

「考えてみると我々は自分の脳を自分のものだと思っているが 目に見えないものが出たり入ったりしているかもしれない」

水木しげる『神秘家列伝〈其ノ壱〉 (角川ソフィア文庫)』、紹介されるのはスウェーデンボルグ、ミラレパ、マカンダル、明恵。 案内役のねずみ男がのっけから「世の中には常識では考えられないようなアタマをもった人間がいるものです たとえば柱に頭をぶつけ…

〈広くなった世界のどこへでも行けるように 自分をもっときれいにしないといけない〉

「親不孝が怖くて自分の人生が生きられるか!」というセリフでクライマックスを迎えるエッセイマンガ『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』。タイトルはなんだかシスヘテロの女性が原稿料のため未体験ゾーンに潜入、暴露するふうだけれども、作者の永田…