大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

2021-01-01から1年間の記事一覧

〈あづさゆみ春の真昼の下り電車口あけて狐型美少年眠る  酒井佑子〉

白露に薄薔薇色(うすばらいろ)の土龍(もぐら)の掌(て) 川端茅舎 蟻と蟻うなづきあひて何か事ありげに奔(はし)る西へ東へ 橘曙覧 〈『うたの動物記』は二〇〇八年十月から、二〇一〇年十月まで、日本経済新聞の毎日曜の文化欄に連載されたエッセイで…

『あんのリリック』後編

『あんのリリック 桜木杏、俳句はじめてみました』後編。 夏川結衣演じるクリエイティブディレクター・塔矢ローズゆりのもつ温情と残酷さがいいかんじ。翻弄される昴と杏。 昴は、先輩の神谷(毎熊克哉)から「そもそもおまえは、あの子を連れ回して、どう仕…

『あんのリリック』前編

ドラマW『あんのリリック 桜木杏、俳句はじめてみました』。脚本・荒井修子、監督・文晟豪。原作小説にいくつものドラマを盛りこみ、見ごたえがあった。 原作でも象徴的だった〈優しさはときにはみ出し桜もち〉の句がきれいな導入である。 桜木杏(広瀬すず…

〈柱も庭も乾いている/今日は好い天気だ〉

中原中也記念館の企画『今、読む、中也。』配信視聴。出演は伊藤比呂美と高橋源一郎。ゲストに、第26回中原中也賞受賞の小島日和。 近代詩と現代詩がいっしょに入ってきた高橋源一郎の十代。田村隆一、吉本隆明、中原中也、ランボー。 深刻ではなかった。…

〈典雅なるものをにくみきくさまらを濡れたる蛇のわたりゆくとき  葛原妙子〉

何年もかけて読了。関川夏央『現代短歌 そのこころみ』。いい本だった。2月26日に二・二六の箇所を読めた。斎藤史。 巻頭は「斎藤茂吉の最晩年と青年時代の中井英夫」。 短歌ほろべ短歌ほろべといふ声す明治末期のごとくひびきて 斎藤茂吉 「生活即歌、と誰…

迂回という最短

『のぼる小寺さん』(2020)。原作は珈琲という名のマンガ家による。監督古厩智之。脚本、吉田玲子。 登場する人物たち、すこしずつはみだしている。オタクであるとか、いじめられっ子だったとか。 伊藤健太郎の扱いがおおきい映画ではあるけれど、皆を等分…

「なんだろうね……。弱虫なだけ、みんな。ちょっと成功して、忘れ去られるのが恐いの」

「いま、崖っぷちにいる。その心理を自分で取材してる。そんなことも察しないでヨタ飛ばしてっと、ロクな編集者になれねえぞ、野坂」 「……野坂じゃないし。五木だし」 阪本順治監督『一度も撃ってません』(2020)。主演は石橋蓮司。出演に大楠道代、桃井か…

「これが善六先生の心意気」  『御神酒徳利』

渋谷らくご2月13日、14時の回。 出演は三遊亭好二郎、立川談吉、快楽亭ブラック、柳家小せん。 録画した落語の番組が溜まる一方なので、町の落語会を覗いているばあいでないともおもうけど、所属の異なる四人、立川談吉も快楽亭ブラックもいる。これは聴かな…

〈刑期は、三万年〉

朝、観ていた『魔神戦隊キラメイジャー』ではヒーローたちが猫にされた。猫となった充瑠(小宮璃央)は純粋で、敵であるはずのクランチュラ(声・高戸靖広)とも一時、甘やかな友愛が生まれた。おなじ作り手として、という説明があったけれども、かってに読…

「落とし穴に嵌まってしまった。そのことに彼は気づいていない」

二兎社『ザ・空気 ver.3 そして彼は去った…』観る。 永井愛の脚本・演出。出演に佐藤B作。この二人の名が目当てだったが、金子大地、韓英恵、和田正人、神野三鈴いずれも素晴らしかった。声の出演で吉田ウーロン太。1時間45分。 佐藤B作が演じるのは、番組…

「古典がやっぱり、すごいですよね。あのう、なんか、よく出来てるんですよ……」  松本幸四郎

『春風亭一之輔のカブメン。』落語とトーク。 ゲストは松本幸四郎。そのリクエストで、春風亭一之輔は「死神」を演る。 新春のネタではないと一之輔は言うが、松本幸四郎は、いま演るべき話だと満足そう。カネに目がくらんでノリを越えてしまうニセ医者の、…

吉澤閑也と山井飛翔

松田元太が好きである。夢にでるのは宮近海斗。 『RIDE ON TIME』、舞台が主戦場のTravis Japan。「ジャニーズ」にこだわるかれらの刻苦は美しい。 「Episode1 DANCE」は吉澤閑也に光を当てた。 「いやマジでー。どうやったら、もっとダンス好きになれるんだ…

恋と、秘めごと。

私たちの世代、は。俳優、といっても芸を売るよりも存在を売るという、まあそういったかんじの時間だったので。私はその時代、その時間に、じぶんがどんなことを、どういう存在であるかっていうのを売り飛ばしていたような。だからスタッフにも、本屋さん(…

「これほしい!」「匂いフェチの不良か 変な子だな」

ダヨオ『ロンリープレイグラウンド(上)』。 妻子あるサディスティックな中年男やその家庭を壊そうとした雪文という、重い設定だけれど、過去のすべては悔いとして清算されるし、みんな人が好いから絶望はやってこない。 はじまりは、町中華で働く慧介。気…

〈ドラマから、省略や飛躍を差し引いてしまったら、「退屈」しか残らないでしょう〉  向田邦子

戸棚の隅のちいさな蜘蛛の巣と、縁日の露店の店番をした話をむすびつけたりする。 「ちょっと、みててもらえますか」と店のおばさんに言われてからの数分間。露店のなかに蜘蛛の巣をみつけたとは書いていない。連想は、〈こんなところに巣を張っていて、なに…

「他のものを全部(ぜ───んぶ)、捨てられたらだけどね。」

「どうしちゃったのー、 ななこの弟。」 …ビリビリ、 バチバチッて… ビリビリ ビカビカ ドッカ───ン!!! ジョージ朝倉『ダンス・ダンス・ダンスール』第1巻。外で、ダンス・ダンス・ダンスール新刊告知の「足のポジション」を見て「あ、もう19巻か」とおどろ…

さびしいような色気

『RIDE ON TIME』Snow Man 3話目、「With new colors」の目黒蓮とラウールの発言が印象にのこった。 目黒蓮はどこで見ても良い子。Snow Man へと本格的に移るとき、宇宙Six のメンバーが快く送りだしてくれたという。 「ジャニーズJr.って、その、確定なもの…

「あいつチャイムが鳴るとどっか行くんだ 真面目だったから 授業でも受けに行くのかな」

ジョゼ『さまようまぼろし』。 建物の取り壊しが延期されるよう、七不思議をでっちあげていく。そこへ幽冥の者が現れて、という出だしに映画『ビリケン』を連想する。 綺麗な用務員さんと、生徒会役員の「僕」と、その兄。人物が出揃ってから、淡い恋ごころ…

昭和30年代。大阪。

舞台は、大阪。文楽の人形遣いの役である藤山寛美と、そこに入っていこうとするエルザ(イーデス・ハンソン)のやりとり。 「アタシねえ、アンタに礼いわなァ思てまんのや」 「なんでや」 「恥ずかしいこっちゃけど、アンタアタシに文楽の見方ちゅうものを教…

「心に余裕があるうちは、意味のないことをしていたいんです。きっと今しかできないから」

テレビドラマ『夢中さ、きみに。』。和山やまの原作はフラットで、真顔の陰キャたち。ドライに科白していくほうの青春だから、ドラマ化には不安もあった。が、愚直といえるほど原作に忠実な台本や、高橋文哉と坂東龍汰のみごとな演技(「うしろの二階堂」)…

それも青春ではあるけれど

さとうくんはおおきな仕事をのがしたのじゃなかろうか。