大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

2021-01-01から1年間の記事一覧

「目のまえのものしか変えられない……。見えていればそこに命を吹きこめる」

『グースバンプス 呪われたハロウィーン』(2018)。1作目の邪悪な腹話術人形スラッピーが再度登場。ハロウィンの夜、スラッピーが町じゅうの仮装人形や道具に生命を与えるという展開は、モンスターの可能性を狭めているけれども。 活躍するのは中学生のソニ…

おとなとこどもが、おなじ壁をみている。

『グースバンプス モンスターと秘密の書』(2015)。ジュブナイルだが『キャビン』や『ゴーストバスターズ』(2016)の賑やかさ。あるいは『バタリアン』『ビートルジュース』辺りだろうか。種々のモンスターをモブとして扱うところが良い。 シナリオも魅力…

アルゼンチンホラー

デミアン・ラグナ監督『テリファイド』(2017)。 屋内。血まみれの女性、被疑者にされる男性パートナーという序盤はウェス・クレイヴンの『エルム街の悪夢』(1984)を想い起こさせてくれた。『壁の中に誰かがいる』とか。建て付けの良くない家が恐いものを…

「怖がることを怖がらないで」

『ハイルシュテッテン〜呪われた廃病院〜』(2018)。結びは一応ホラーだけれど、終盤の二転三転はサスペンスかも。 人気ユーチューバーのコラボ企画として廃病院で肝だめし。冒頭字幕ではサナトリウムだったこの施設で人体実験が行なわれていたこと、106号…

「人って本当によく嘘をつくんです そしてそれを指摘されるのを嫌がる」

原作・澤村御影、漫画・相尾灯自。『准教授・高槻彰良の推察』コミカライズの第2巻。 君を気持ち悪いと言う人がいるなら きっとその人は僕のことも気持ちが悪いと思うだろうね 高槻彰良と深町尚哉のむすびつき。 「不思議な話が生まれる背景には そのまま語…

「怪異っていうのは『現象』と『解釈』のふたつによって成り立っているんだよ」

「解釈をするときは気をつけないといけない 下手な解釈は現象そのものを歪めることがあるから」 原作・澤村御影、漫画・相尾灯自。『准教授・高槻彰良の推察』のコミカライズ、第1巻。 民俗学には「僕が調査に行ってしまったがために 何の土地的根拠もなく…

「ミステリーじゃなくてラブコメかな? と錯覚します(笑)」  神宮寺勇太

インパクトある表紙だった。撮ったのは田中和子(CAPS)。伊野尾慧と神宮寺勇太が連続ドラマ『准教授・高槻彰良の推察』。 個体差としての「かわいい」が身につくのは三十路のころかもしれない。磨きをかけた伊野尾慧が凄く、ドラマのなかで助演として輝くだ…

〈俺たちモグラ 酒があればいい〉

椿組『貫く閃光、彼方へ』観る。花園神社野外劇。 1年間、延期されていた演目。おもな舞台は1962年の新丹那トンネル掘削現場。このトンネルを新幹線が走る。目ざすは1964年の東京オリンピック。TOKYO2020に合わせたテーマでもあったわけだ。 「コロナ禍の中…

杉田玄白83歳

扉座『解体青茶婆』観る。作・演出、横内謙介。 日本の古典芸能に寄せた演出で、正方の舞台。生の演奏(ここではヴァイオリン)。間接照明、また夜を表すものとして蝋燭の灯り。 杉田玄白(有馬自由)の晩年。「蘭学事始」の草稿は出来ている。しかし、腑分…

(不器用が愛しいのか。愛しいけど不器用なのか)

『裸の少年』美 少年の髪型が新ドラマの仕様になり、楽しみになってくる。 ダンス早覚え対決。HiHi jets の作間龍斗、井上瑞稀はさすが。 そして美しさを取り戻した佐藤龍我。遠慮がちな時期を経て、よみがえる悪童の快活。悪童の心はまっすぐだ。 『ザ少年…

〈議会も虚ろな空間にすぎないのだ。失敗も成功もすべては上層部が決定する。私が、北と南の体制がどこか似ているという疑問を抱きはじめたのはその頃からである〉

李恢成『可能性としての「在日」』。エッセイと講演録。1970年から2001年まで。ながい時間が1冊にまとまっている。ここで何度も言及される北朝鮮と韓国の平和的統一は、まだ実現していない。 初出もあるけれど、底本に『沈黙と海』『円の中の子供』『時代と…

「世界を食ってやるって思ってた。だけど実際は」

インターネットの情報や、闇。そこを泳いでカネを持とう、権力を握ろうというイキッたIT仲間たち。ひさしぶりにあつまる。 密室の会話劇。近隣のWi-Fiすべてに入ることができる、きみたちのパスワードも当ててみせるなんて話からウィキリークス、アノニマス…

〈屋根の間をゆるゆると鷲だ〉  岡田幸生

岡田幸生の句集『無伴奏』。はじめに刊行されたのは1996年。文庫サイズの新版を、御本人から買うことができる。 「序」で北田傀子が書いている。 〈短時日のうちに随句(自由律俳句)というものの、いわば息遣いがのみこまれたようで、私は目を見張る思いが…

舞台にも。俳優がたくさんたくさん乗っていた日を思いだしつつせむし男。

演劇実験室◎万有引力『青森県のせむし男』観る。琵琶、川嶋信子。二十五絃箏、本間貴士。上演時間1時間15分。 寺山修司の、探偵小説ごのみ。独白と、噂話ではじまるので、人間と人間がぶつかり合うドラマは中盤以降。 老いたる花嫁・大正マツに高田恵篤、女…

画も声も清潔。

BL長編アニメ『海辺のエトランゼ』(2020)。紀伊カンナ原作。 舞台は沖縄の離島。母を亡くして孤独な実央(松岡禎丞)×ゲイだが未経験の小説家・駿(村田太志)。 恋愛感情なのかどうか語られることこともなくするりと三年後の再会。「理由なんかいいんだよ…

排除する思春期

『プリンシパル〜恋する私はヒロインですか?〜』(2018)。原作・いくえみ綾。監督・篠原哲雄。脚本は持地佑季子。 若き日におとずれる好意の変遷。2時間の映画だからエピソードは省略される。あいてをいつ好きになり、どこで好きでなくなるか。そこにあま…

マヒ×ヒロ

『散歩する侵略者』(2017)の衝撃は高杉真宙だった。浮世ばなれした美少年。 長澤まさみと松田龍平が演じる、壊れつつあった夫婦の愛の物語だが、あんがい高杉真宙と長谷川博己のドラマでもあった。 ジャーナリストの桜井(長谷川博己)は宇宙人を名のる天…

「僕たちは、ただ集まり、ただ漠然と、奇跡だけを信仰していた」

『昭和歌謡大全集』(2003)。監督・篠原哲雄。脚本・大森寿美男。原作は村上龍。青年とオバサンの抗争劇。 みんなマトモでスマートなんだから、暴力に訴える奴なんかいないとおもわれていた一時期の日本。戦争や、自国民への武力行使は遠くの世界のお話だっ…

芸術新潮 美 少年

『芸術新潮』2021.6 特集「新・永遠の美少年」。撮りおろしスペシャル・グラビアに美 少年。 若き日のジョセフ・バンクスの肖像画が典型的な美少年で眼をうばわれた。色白、細面、まなざしに物憂げな印象。瞳につよい確信がやどれば少年期は終わるだろう。 1…

〈難民キャンプに通った。旅の技術とは無縁の、旅というものが少しわかった気がした〉  下川裕治

『旅が好きだ! 21人が見つけた新たな世界への扉』――「14歳の世渡り術シリーズ」の1冊。 14歳への短文ということで、舐めた仕事するひともいれば、真摯なひと、深くえぐってくる、ふんわりと仕上げる、講義調などさまざま。その読み味が大人としてはおもしろ…

情炎の相聞歌

おしゃれ紳士×梅棒『The Story ベランダカラミルモノガタリ』観る。そのあと花園神社で唐組『ビニールの城』を。 『ベランダカラミルモノガタリ』。おしゃれ紳士からは西川康太郎、池田遼、井内勇希、伊藤祐輔。 梅棒からは伊藤今人、遠山晶司、遠藤誠、櫻井…

あくまで身体表現としての、発話。

『WOW! いきなり本読み!』#1 。 脚本・演出は岩井秀人。今回の本である「ごっちん」にぶっつけで挑んだのは水川あさみ、上白石萌歌、皆川猿時。 台本を与えられ、指示を受け、意図を汲み、演じる。一人で何役も掛け持ちしたり、ばめんが変わればちがう役を…

6と5

『文豪少年! 〜ジャニーズJr. で名作を読み解いた〜』。 好きだった子をさらに愛でるようになったり、ここきっかけの出会いがあったり。 第6話の深田竜生に胸射抜かれた。それはさいしょの喫茶店から。 「ホントなんもないっすね」 「どうぞ、お好きな席へ…

嘘と、ささやかな多声。

「先生ワタシね、ワタシねじぶんが今しゃべったこと、じぶんが今しゃべったこと、次の瞬間忘れてるんです」 「困りましたねそれは」 「何が?」 笑福亭松枝「高津の富」。『新春揃踏 角座演芸づくしの会』(心斎橋角座 2021.1.1)より。 ドクターシリーズと…

「どんな大金よりも、私はお母さんの写真が欲しい」  ラフカディオ・ハーン

〈大学で民俗学を専攻した理由は、旅を続けたいからだった。放浪癖があった私は、小学校高学年の頃にはひとりで時刻表を片手に週末ごとに関東地方の史蹟や伝統的な町並みを訪ね、あるいは山歩きを楽しんだりして至福の時を見出していた。中学生時代には山梨…

表紙はチャウヌ

『ニューズウィーク日本版』2021.5.4/11、「韓国ドラマ&映画50」。 これから公開されるホン・サンス監督『逃げた女』、イ・ジョンピル監督『サムジンカンパニー1995』が待ち遠しくなる。 「私のとっておき映画5本」。はるな愛、クォン・ヨンソク(権容奭)…

十朱大吾 斧田駿 中村雪

曽田正人 冨山玖呂『め組の大吾 救国のオレンジ』第1巻。飛び抜けた主人公に、助演の生ま生ましい感情。読んで良かった。 “狭き門”をくぐるにはグレーやブラック、あるいはもっと不可解な色を経ることがあるかもしれない。そのときのヤバさというかアツさ。…

言葉遊びする生きものたちの可愛さ

矢川澄子訳、金子國義絵。ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』。 さいしょに夢中になったのは河出文庫(高橋康也・高橋迪訳)で。ジョン・テニエルによる挿画、人間が皆グロテスクに描かれていたのも好かった。 そこからさまざまな版や研究本へと手が伸…

「このときを待ってたんだ。スロットじゃなにも生まれない」

マリヤッタ・クレンニエミ原作(絵・マイヤ・カルマ)の児童小説『オンネリとアンネリのおうち』(2014)。監督はサーラ・カンテル。 大家族のなかでさびしいオンネリ(アーヴァ・メリカント)と、離婚家庭にあってさびしいアンネリ(リリャ・レフト)。ふた…

「近ごろの犬は、じぶんの幸運がわかっていない」

『ロイヤルコーギー レックスの大冒険』(2019。ベルギー)。 皇室で寵愛された若きレックスが、おなじコーギーであるチャーリーに嵌められ、そとのせかいの施設行き。そこでのファイトクラブなど経て帰還する物語。 レックスも、ロマンスのあいてとなるワン…