大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

トゥンク ティモシー・シャラメ ほか

やまもり三香『うるわしの宵の月』第3巻。 「手を出してみて 好きかどうか確かめるって おかしいでしょ 順番逆でしょ」 「だってオレ 今までこんな プラトニックなの 経験したこと ないからさ」 キスが駄目なら手をつなごう。琥珀は提案する。宵は「――でも …

「試しにって どこまで?」

やまもり三香『うるわしの宵の月』第2巻。 たぶん 私は くやしかったんだと思う いつも いつの間にか 向こうのペースに はまっていて だから どんな顔をするのか見たかった なにも起こっていないはずなのに、なにも起こっていないはずなのに激動、疾風怒濤…

〈この男 王子というより ヤカラじゃないか〉

「このマンガがすごい!」から。やまもり三香『うるわしの宵の月』。第1巻。 ひょろりと伸びた体躯 やや低めの声 親ゆずりの男顔 滝口宵 高校1年 性別、女。 「王子」と呼ばれる少女と、これまた「王子」と呼ばれる少年の恋愛物語。あいてに対して突っぱっ…

はいゆうたちのいるところ

『ヒルコ/妖怪ハンター』(1991)。原作は諸星大二郎。監督、塚本晋也。 特撮、SF、ホラーへのオマージュもふんだんに、画がしっかりと怖い。 出演は沢田研二、工藤正貴、上野めぐみ。ユーモラスな部分を沢田研二が受けもつことで、怖くて可笑しい諸星大二…

「これが九ヵ月前なら、わたしだって彼女の経歴に怪しい点があると言ったかもしれない……」

グレアム・グリーン原作の舞台『叔母との旅』。観るまえから涙があふれ、終演後にはボロ泣き。抑えられない。 映画でいうと『シラノ・ド・ベルジュラック』(1990)や『アマデウス』(1984)のような、堂々たる「告白」の物語。あるいは「告白」へと近づいて…

「ここはリーザ。チェルノブイリとおなじくらい退屈なところだ」

2000年の映画『相撲取りブルーノ』(Sumo Bruno)。前年にドイツのリーザで開催された第8回世界相撲選手権大会の熱がさめないうちにつくられた物語。 主人公のブルーノは失業中の内気な巨漢。ジョン・ベルーシよりもMr. ビーンに似た印象。 朝から泡風呂に…

ニンジャバットマン ザ・ショー

『ニンジャバットマン ザ・ショー』観る。演出/構成は梅棒の塩野拓矢。構成・文化監修、音楽監督にHANZO。ダンスとラップ、HIP HOP な要素多めの2.5次元。 予習が必須というよりも、アニメ『ニンジャバットマン』の復習になりそうな。台詞すくなく敷居は高い…

孤独とあこがれと

『リザとキツネと恋する死者たち』(2014)。 舞台はハンガリー。日本の歌謡曲を好きな女と、フィンランド歌謡を愛する男。どちらもすこしはみだしている。 女の名は、リザ(モーニカ・バルシャイ)。愛読する日本の小説のヒロインのように、30歳になればハ…

駄菓子屋の豊饒

はえぎわ『ベンバー・ノー その意味は?』観る。会場は新宿シアタートップス。かつて新宿角座だったところ。 すこしずつ、なにかが無くなっていくと舞台でノゾエ征爾が言った。「ノゾエの『ゾ』がなくなってノエになる」と。 それは筒井康隆の小説『残像に口…

地に足のついたストーリーテリング

オクイシュージ脚本、監督『王様になれ』(2019)。原案は山中さわお。the pillows 30周年記念映画。 若いときに賞こそ獲ったもののなかなか目がでない写真家志望の神津祐介(岡山天音)、27歳。叔父(オクイシュージ)のラーメン屋で働いている。 祐介が出…

「情熱をうしなったというよりは、情熱を理想化して、凍りつかせてしまったと言ったほうがいいのかもしれない」

ケムリ研究室no.2 『砂の女』(シアタートラム)。主演は緒川たまき、仲村トオル。ほかにオクイシュージ、武谷公雄、吉増裕士、廣川三憲。声(とシルエット)、町田マリー。音楽・演奏、上野洋子。 原作は安部公房の小説。濃密かつ映像的な世界がみごと演劇…

安部公房『友達』

配信、シス・カンパニー『友達』(新国立劇場・小劇場)。安部公房原作の、典型的な不条理劇。《疎外》をかんじている孤独な青年の部屋を、まったく面識のない大家族が訪れ、住みつく。監視と監禁。ドラマの密室性を高めるためには部活や会社などよりも都合…

「これより千六百年の休憩に入ります」

作・しりあがり寿、演出・天野天街。芸術監督に流山児祥。『ヒ me 呼』観る。 器のおおきい流山児祥と、器のおおきいしりあがり寿と、器のおおきい天野天街と。想像以上にファンタジーで、リアルで、古代で、現代だった。 物語のはじまりは現代の温泉場。そ…

「これも霊の仕業なの!?」「これは……タブレットのギガ不足です」「プランを見直しなさいよ!」

ホラー・コメディ『祟り蛇ナーク』(2019)。出家志願のイケメンと、二人のオネエ。 画の意識はつよい。フツメン、少年修行僧。練り歩く死体。流しっぱなしにしておいて、かれらが目に入るのは、わるくない。 しかし台本はゆるい。主人公ナーンと、祟り蛇と…

「物理学者でありながら、罪に染まらず」

フリードリヒ・デュレンマット原作『物理学者たち』(ワタナベエンターテインメント Diverse Theater)観る。上演時間2時間10分。 舞台は「桜の園」という名の、いまは精神病患者の施設となったサナトリウム。 自称ニュートン、自称アインシュタイン、殺害、…

監禁の予告

『准教授・高槻彰良の推察』第7話「四時四十四分の怪」。 「見られてしまったね……。これを説明するには、いろいろ話さなきゃいけないことがある。あまり楽しい話じゃないから、できればいまはしたくない。構わない?」 無言の深町尚弥に「やっぱり深町君は…

「噂が広がらないようにするには、噂をホントのことにすればいい」

『ピーチガール』(2017)。原作は上田美和の少女マンガ。キャラクターが魅力的だ。 口数すくなく、あいての内面には立ち入らない東寺ヶ森一矢(真剣佑)。 じぶんよりも他人を優先する岡安浬(伊野尾慧)。青春は騎士道だから、幸福に対して不器用である。 …

「先生は、おれがいなくても嘘を見抜けるんじゃないですか?」

『准教授・高槻彰良の推察』第4話。 微熱で寝込んでいる深町尚哉(神宮寺勇太)。夢うつつに、不吉な祭りの太鼓の響きと、訪問者の玄関を叩く音が混じる。真ッ直ぐな演出。台本。気持ちがいい。 看病にやってきたのはもちろん高槻で、持参のアイスクリームが…

「自分に酔う日があっても、いいんじゃない?」  神宮寺勇太

『anan』2021.9.1 伊野尾慧×神宮寺勇太。 いくつも表情をつくれる伊野尾慧がきれい。「ネイルってちょっと前までは女性がするものってイメージだったけど、最近はそんなの関係なく楽しめるようになりましたよね。今日の撮影はそういう自由な時代の到来を実感…

〈そうだ私 いつもその2つに分けてた 老と若 世界はその2つしかないみたいに〉

松本英子のエッセイ漫画『49歳、秘湯ひとり旅』を堪能。どんなフィクションにも書き手の実体験を伴ったリアリティは入りこんでいるだろうけど、そのうえで作家が透明になろうとするエンタメ指向もあり、エッセイでそれをやれば「ただのレポ」になってしまう…

(出た…! 粉もんになると出てくる奉行おかずちゃん…!)

オトクニ『広告会社、男子寮のおかずくん』第7巻。完結。 あたたかくって、品がある。大阪弁の小説を読んでいるようで好きだった。 おまけの4コマパートにでてくる「たこせん」大阪のそれは「えびせんにたこ焼きをはさんだやつ」で、「想像どおりの味だ〜…

「きみはもう、ここの人間だよ。ここのコーヒーを飲んだだろ」

ドラマ『准教授・高槻彰良の推察』、びっくりするくらいおもしろい。 いくつもの挿話を並走させぬシンプルな語りゆえに、原作小説からのコミカライズ、さらにドラマ化という整理、洗練が意味をもつ。佳く刈りこまれている。 「TV LIFE」伊野尾慧の「神宮寺君…

「ナイフを落とすと『男』が現れる スプーンだと『女』が フォークだと『男でも女でもない』だろう」

ロドリゴ・グディノ監督『恐怖ノ黒洋館』(2012)。82分。原題は「The Last Will and Testament of Rosalind Leigh」――ロザリンド・リーの遺言。 老女ロザリンド・リーのモノローグではじまる。この女性がこの世を去っていることは、すぐにわかる。息子のレ…

「服によってダンスがうまく見える、見えないっていうのが結構あって」  平野紫耀

『TV LIFE』2021.8.20 平野紫耀。官能的なだけではない。この笑顔。 撮影・干川修、中村功。 二年ぶりの『かぐや様』は「本読みの時から監督にたくさん相談しましたし、続編だからといって安心することはなかったです」。

情念がほぐれる。神は居る。

シルク博物館に寄ってから、とりふね舞踏舎『サイ Sai 踊るべき人は踊り、歌うべき人は歌え』。 ずいぶん前に足をはこんだときよりも、いくらか観る眼が養えていた。上演時間90分が、あっという間に経つ。 立ちどまること、うずくまること――身体的な凝縮、緊…

「目のまえのものしか変えられない……。見えていればそこに命を吹きこめる」

『グースバンプス 呪われたハロウィーン』(2018)。1作目の邪悪な腹話術人形スラッピーが再度登場。ハロウィンの夜、スラッピーが町じゅうの仮装人形や道具に生命を与えるという展開は、モンスターの可能性を狭めているけれども。 活躍するのは中学生のソニ…

おとなとこどもが、おなじ壁をみている。

『グースバンプス モンスターと秘密の書』(2015)。ジュブナイルだが『キャビン』や『ゴーストバスターズ』(2016)の賑やかさ。あるいは『バタリアン』『ビートルジュース』辺りだろうか。種々のモンスターをモブとして扱うところが良い。 シナリオも魅力…

アルゼンチンホラー

デミアン・ラグナ監督『テリファイド』(2017)。 屋内。血まみれの女性、被疑者にされる男性パートナーという序盤はウェス・クレイヴンの『エルム街の悪夢』(1984)を想い起こさせてくれた。『壁の中に誰かがいる』とか。建て付けの良くない家が恐いものを…

「怖がることを怖がらないで」

『ハイルシュテッテン〜呪われた廃病院〜』(2018)。結びは一応ホラーだけれど、終盤の二転三転はサスペンスかも。 人気ユーチューバーのコラボ企画として廃病院で肝だめし。冒頭字幕ではサナトリウムだったこの施設で人体実験が行なわれていたこと、106号…

「人って本当によく嘘をつくんです そしてそれを指摘されるのを嫌がる」

原作・澤村御影、漫画・相尾灯自。『准教授・高槻彰良の推察』コミカライズの第2巻。 君を気持ち悪いと言う人がいるなら きっとその人は僕のことも気持ちが悪いと思うだろうね 高槻彰良と深町尚哉のむすびつき。 「不思議な話が生まれる背景には そのまま語…